AOR名盤を100枚、ランキング形式で完全網羅。西海岸ヨットロックからブルーアイドソウル、80年代アリーナAOR、和モノAOR/シティポップ、そして通好みの隠れ名盤まで——各アルバムの聴きどころと試聴リンク付きで、初心者にもわかる「AOR名盤ベスト100」の決定版ガイドです。まずは「聴く順番」のおすすめ5枚から、気になるカテゴリへどうぞ。
1976年、Boz Scaggs『Silk Degrees』とEagles『Hotel California』が同年に世に出た瞬間、いわゆるAOR(Adult Oriented Rock)の方法論が定まった。それから50年。AORは “70年代後半の音響革命” であると同時に、いまも更新され続ける美意識の体系である。本記事は、AOR黄金期の代表作から、ヨットロック、シティポップ、メロウソウル、ジャズフュージョンまで含めた“広義のAOR” 100枚を、5つのカテゴリに分けて徹底紹介する。各アルバムには「なぜこの作品か」を1〜2行で示し、当サイトに個別レビューがある作品は記事リンクから深掘りできる構成にした。
この100選の選び方について
選定基準を先に明かしておく。
第一に、全曲を実際に聴いた作品だけを載せる。本リストは資料の寄せ集めではなく、運営者が長年聴いてきたレコード/CD/ストリーミングの実聴体験がベースにある。「聴いていないが有名だから」という理由で載せた作品は1枚もない。
第二に、順位は「歴史的重要度×今日聴いたときの快感」の掛け算で決めた。発売当時のチャート成績はあくまで参考値とし、2020年代の耳で聴いて色褪せていないかを重視している。だから世評と順位が食い違う箇所が、意図的にある。
第三に、広義のAORを採る。純粋なウェスト・コースト産に限定せず、ブルーアイドソウル、フュージョン、アリーナ寄り、日本のシティポップまで「同じ美意識で録音された音楽」を1つの地図にまとめた。ジャンルの壁より、音の連続性を優先している。
定義や区分には異論もあるはずだ。それでいい。このリストは「正解」ではなく、あなたが次の1枚に出会うための海図であり、当サイトの全記事はこの地図を起点に枝分かれしていく。記載事実(年・レーベル・チャート)は公開資料と照合しているが、誤りに気づかれた場合はお問い合わせからご指摘いただきたい。確認のうえ随時修正する。
🎵 各アルバムを試聴しながら読めます
下記100枚のリストには、各アルバム名の横に 🎵 試聴 リンクを設置しています。Spotify検索画面が開くので、無料アカウント(または既存のSpotify/Apple Music/Amazon Music)で即試聴可能。本文を読みながら音を確認すると、AOR名盤100選の全体像が一気に掴めます。
まず、あなたに合った1枚から
100枚を上から順に読む必要はありません。いまの気分に近いものを選んで、そこから広げてください。
- AORを初めて聴く ─ 最初の1枚に『TOTO IV』を選ぶべき理由と聴きどころ
- 有名どころは一通り聴いた ─ 通好みのAOR隠れ名盤10選
- 80年代の煌めきが好き ─ 80年代AOR名盤10選を年代順に
- 日本のAORが気になる ─ シティポップ名盤18選
- 歌より演奏に浸りたい ─ スムースジャズ/フュージョン名盤8選
本記事の使い方・5つのカテゴリ
- 1. 西海岸/ヨットロックの本流(30枚)— AORというジャンルの中核
- 2. ブルーアイドソウル/メロウ系(20枚)— 黒いAOR、白いソウル
- 3. ハードロック/アリーナ系AOR(15枚)— 商業的に最も成功した路線
- 4. ジャズ・フュージョン系(15枚)— AORの “音響的源流”
- 5. ジャパニーズAOR/シティポップ(20枚)— 日本独自の到達点
1. 西海岸/ヨットロックの本流(30枚)
1976〜1982年、ロサンゼルスを中心に確立された AOR の正統派。Boz Scaggs を皮切りに、Eagles、Steely Dan、Toto らが定型を示した時代。
- Boz Scaggs 『Silk Degrees』(1976) 🎵 試聴 ─ のちにTotoを結成するデヴィッド・ペイチ、ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ハンゲイトが演奏を支え、プロデュースはジョー・ウィザート。全米2位を記録し、「Lowdown」はグラミー賞最優秀R&B楽曲賞を受賞しました。ポーカロのハイハットが刻む16ビートと、ボズの抑えた歌い口の対比に注目すると、AORという音の設計図が見えてきます。「We’re All Alone」の静かな余韻まで含めて一枚で味わいたい作品です。 詳細レビュー →
- Eagles 『Hotel California』(1976) 🎵 試聴 ─ ジョー・ウォルシュ加入後初のアルバムで、プロデュースはビル・シムジク。全米1位を通算8週獲得し、タイトル曲がグラミー賞最優秀レコード賞に輝きました。AORの耳で聴くなら、「New Kid in Town」の柔らかなハーモニーと、タイトル曲終盤のツイン・ギターの絡みに注目を。ロック・バンドが西海岸の洗練へ踏み込んだ瞬間を記録した一枚として、ウエストコースト・サウンドの入口にも向いています。 詳細レビュー →
- Steely Dan 『Aja』(1977) 🎵 試聴 ─ ゲイリー・カッツのプロデュースのもと、一流セッション奏者を曲ごとに起用して作られた全米3位作で、グラミー賞最優秀録音賞を受賞。タイトル曲ではスティーヴ・ガッドのドラム・ソロとウェイン・ショーターのテナー・サックスが、ジャズとポップの境界を軽々と越えていきます。「Peg」「Deacon Blues」の精緻なコード進行も聴きどころで、録音の質感そのものを楽しむ聴き方が似合う作品です。 詳細レビュー →
- Boz Scaggs 『Middle Man』(1980) 🎵 試聴 ─ 前作『Silk Degrees』から4年、デヴィッド・フォスターが大半の曲を共作し、ビル・シュニーがプロデュースと録音を担った全米8位作です。「Breakdown Dead Ahead」は全米15位、デヴィッド・ラズリーも作曲に加わった「Jojo」は17位。スティーヴ・ルカサーやジェフ・ポーカロら後のTotoの面々が刻むタイトなグルーヴと、フォスターの華やかな鍵盤アレンジの組み合わせは、80年代AORの典型を示しています。 詳細レビュー →
- Toto 『Toto IV』(1982) 🎵 試聴 ─ メンバー自身がプロデュースを手がけ、グラミー賞で最優秀アルバム賞と「Rosanna」の最優秀レコード賞を含む6部門を制した代表作です。「Africa」はバンド唯一の全米1位。「Rosanna」でジェフ・ポーカロが叩くハーフタイム・シャッフルは、ドラマーの間でも語り継がれるグルーヴです。AC チャート1位の「I Won’t Hold You Back」まで、ロックとAORを自在に行き来する演奏力を確かめられます。 詳細レビュー →
- Boston 『Boston』(1976) 🎵 試聴 ─ トム・ショルツがマサチューセッツ州ウォータータウンの自宅地下スタジオで大半を録音し、ジョン・ボイランと共同プロデュースしたデビュー作。全米3位を記録し、米国内で1,700万枚認定という驚異的なセールスを残しました。「More Than a Feeling」で幾重にも重ねられたギターと、ブラッド・デルプの高音ヴォーカルの層の厚さは、緻密な多重録音の成果。ロック寄りのAORを探る方の基準点になる一枚です。
- Journey 『Escape』(1981) 🎵 試聴 ─ グレッグ・ローリーに代わってジョナサン・ケインが加入した最初のアルバムで、マイク・ストーンとケヴィン・エルソンの共同プロデュースにより全米1位を獲得しました。ケインのピアノで始まる「Don’t Stop Believin’」、全米2位のバラード「Open Arms」と、鍵盤がバンドの音像を一段広げたことがよく分かります。スティーヴ・ペリーの伸びやかな声とニール・ショーンのギターの掛け合いも聴きどころです。 詳細レビュー →
- Steely Dan 『Gaucho』(1980) 🎵 試聴 ─ ゲイリー・カッツのプロデュースで1980年11月に発表され、全米9位、グラミー賞では『Aja』に続き最優秀録音賞を受賞しました。「Time Out of Mind」ではダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーがソロを弾き、マイケル・マクドナルドもコーラスに参加しています。全米10位の「Hey Nineteen」に聴ける、隙間を生かしたリズムと乾いた音の質感は、ドナルド・フェイゲンのソロ作へとつながる流れを感じさせます。 詳細レビュー →
- Toto 『Toto』(1978) 🎵 試聴 ─ 名うてのセッション奏者たちが自らプロデュースまで手がけたデビュー作で、全米9位を記録しました。デヴィッド・ペイチ作の「Hold the Line」は全米5位のヒットとなり、ボビー・キンボールの力強い歌とスティーヴ・ルカサーのギター・ソロが鮮烈です。一方で「Georgy Porgy」ではしなやかなシャッフルとソウルフルな質感を聴かせ、ロックとAORの両面をすでに備えていたことが分かります。 詳細レビュー →
- Eagles 『The Long Run』(1979) 🎵 試聴 ─ ビル・シムジクのプロデュースで1979年に発表され、9週連続で全米1位を記録しました。「Heartache Tonight」も全米1位となり、グラミー賞を受賞しています。AORファンに薦めたいのは、ランディ・マイズナーに代わって加入したティモシー・B・シュミットが歌う「I Can’t Tell You Why」。ファルセットを交えた柔らかな歌声とR&B風のゆったりしたグルーヴは、ヨット・ロックのど真ん中といえる仕上がりです。 詳細レビュー →
- Journey 『Frontiers』(1983) 🎵 試聴 ─ 前作『Escape』と同じマイク・ストーンとケヴィン・エルソンのプロデュースで、全米2位まで上昇しました。冒頭の「Separate Ways (Worlds Apart)」は全米8位、バラード「Faithfully」は12位。シンセサイザーを前面に出した重厚な音像は、より洗練へ傾いた前作と聴き比べると違いが際立ちます。ジョナサン・ケインの鍵盤とスティーヴ・ペリーの歌唱が噛み合う瞬間を追うと、80年代前半の空気がよく伝わります。 詳細レビュー →
- Doobie Brothers 『Minute By Minute』(1978) 🎵 試聴 ─ テッド・テンプルマンのプロデュースで1978年12月に発表され、全米1位を獲得。マイケル・マクドナルドとケニー・ロギンスの共作「What a Fool Believes」も全米1位となり、グラミー賞の最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を受けました。跳ねるようなエレクトリック・ピアノと重なり合うコーラスは、いわゆる「ドゥービー・バウンス」の典型。タイトル曲のメロウな展開も含め、マクドナルド時代の到達点を示す作品です。 詳細レビュー →
- Christopher Cross 『Christopher Cross』(1979) 🎵 試聴 ─ マイケル・オマーティアンのプロデュースで1979年12月に発表され、翌年のグラミー賞で最優秀アルバム賞、最優秀新人賞など主要5部門を独占したデビュー作です。「Ride Like the Wind」ではマイケル・マクドナルドのコーラスが印象的に響き、ジェイ・グレイドンやラリー・カールトンもギター・ソロで参加。「Sailing」の透明感あるストリングスとアコースティック・ギターの重なりは、ヨット・ロックという呼び名を象徴する音です。 詳細レビュー →
- Michael McDonald 『If That’s What It Takes』(1982) 🎵 試聴 ─ ドゥービー・ブラザーズ解散後のソロ・デビュー作で、テッド・テンプルマンとレニー・ワロンカーが共同プロデュースし、全米6位を記録しました。「I Keep Forgettin’」は全米4位。ジェフ・ポーカロとスティーヴ・ガッドのドラム、ルイス・ジョンソンらのベース、ジェリー・ヘイのホーン編曲と、西海岸の精鋭が揃った演奏は密度が高く、ケニー・ロギンスとクリストファー・クロスもコーラスで参加しています。 詳細レビュー →
- Donald Fagen 『The Nightfly』(1982) 🎵 試聴 ─ スティーリー・ダンでの相棒ゲイリー・カッツをプロデューサーに迎えたドナルド・フェイゲン初のソロ作で、ポピュラー音楽における初期のフル・デジタル録音の一例として知られます。全米11位、グラミー賞では7部門にノミネートされました。「I.G.Y.」の端正なリズムと幾重にも重なるホーン、リーバー&ストーラー作「Ruby Baby」の大胆な再解釈に、録音と編曲へのこだわりが表れています。 詳細レビュー →
- Larry Carlton 『Larry Carlton』(1978) 🎵 試聴 ─ スティーリー・ダン「Kid Charlemagne」などで知られる名セッション・ギタリストが、自らプロデュースと編曲を手がけた1978年作です。冒頭の「Room 335」は、愛用のギブソンES-335にちなんで名付けた自宅スタジオの名前から取られた曲。ジェフ・ポーカロのドラムとエイブラハム・ラボリエルのベースに乗って、伸びやかに歌うギターのトーンを堪能できます。歌ものAORからフュージョンへ足を延ばす際の橋渡しに適した一枚です。 詳細レビュー →
- Lee Ritenour 『Captain Fingers』(1977) 🎵 試聴 ─ 1977年にEpicから発表されたリー・リトナーの作品で、デイヴ・グルーシン、ハーヴィー・メイソンを軸に、ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・フォスター、ジェイ・グレイドンらも参加しています。タイトル曲の速いパッセージで「キャプテン・フィンガーズ」の異名どおりの技巧を聴かせる一方、スティーヴィー・ワンダー「Isn’t She Lovely」のカバーではビル・チャンプリンが歌い、AOR人脈との接点がはっきり見えます。
- Pages 『Pages』(1978) 🎵 試聴 ─ のちにMr. Misterで全米1位を獲得するリチャード・ペイジとスティーヴ・ジョージが中心となったバンドのデビュー作です。Blood, Sweat & Tearsのボビー・コロンビーの導きでEpicと契約し、フィリップ・ベイリーやマイケル・ブレッカーらがセッションに参加しました。チャートには届きませんでしたが、軽やかなファンク「Clearly Kim」の洗練されたコード感とペイジの高音ヴォーカルは、後年の評価を裏付けるものです。
- Airplay 『Airplay』(1980) 🎵 試聴 ─ デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンが共同プロデュースし、トミー・ファンダーバークをヴォーカルに迎えて1980年にRCAから発表した唯一のアルバムです。ジェフ・ポーカロやデヴィッド・ハンゲイトらTotoの面々も参加。アース・ウィンド&ファイアーへ提供した「After the Love Has Gone」のセルフ・カバー(本作での曲名表記は「After the Love Is Gone」)や、「Should We Carry On」の高揚するコーラスに、ふたりの作編曲術の粋が詰まっています。 詳細レビュー →
- Robbie Dupree 『Robbie Dupree』(1980) 🎵 試聴 ─ ピーター・ブネッタとリック・チュダコフのプロデュースでElektraから発表されたデビュー作です。シングル「Steal Away」は全米6位のヒットとなりました。エレクトリック・ピアノの軽やかなリフに乗る爽やかなメロディは、1980年前後の西海岸サウンドの空気をよく伝えています。マイケル・マクドナルドの音楽が好きな方なら、柔らかな歌声と風通しのよいアレンジにすぐ馴染めるはずです。
- Player 『Player』(1977) 🎵 試聴 ─ ピーター・ベケットとJ.C.クロウリーを中心とするバンドのデビュー作で、デニス・ランバートとブライアン・ポッターがプロデュースしました。「Baby Come Back」は全米1位を獲得し、32週にわたりチャートに留まるロング・ヒットに。続く「This Time I’m in It for Love」も全米10位です。ベケットとクロウリーの溶け合うツイン・ヴォーカルと、ソウル寄りの柔らかなグルーヴは、ホール&オーツ好きにも響く質感です。 詳細レビュー →
- Pablo Cruise 『Worlds Away』(1978) 🎵 試聴 ─ サンフランシスコ出身のバンドが、ボズ・スキャッグス『Middle Man』も手がけたビル・シュニーのプロデュースで制作し、全米6位を記録しました。シングル「Love Will Find a Way」も全米6位。軽快なピアノとギターのカッティングに乗る開放的なメロディは、まさに西海岸の陽光を思わせます。インストゥルメンタル曲も得意とするバンドらしく、楽器同士の掛け合いにも耳を向けると楽しみが広がります。
- Ambrosia 『Life Beyond L.A.』(1978) 🎵 試聴 ─ フレディ・パイロのプロデュースでワーナーから発表された作品で、全米19位を記録。シングル「How Much I Feel」は全米3位のヒットとなりました。プログレッシヴ・ロック色の強かった初期から、デヴィッド・パックの甘い歌声を生かしたメロウな路線へ舵を切った転換点にあたります。「How Much I Feel」のエレクトリック・ピアノと控えめなストリングスの重ね方は、AORバラードのお手本のような仕上がりです。
- Stephen Bishop 『Bish』(1978) 🎵 試聴 ─ スティーヴン・ビショップが自らプロデュースした1978年作で、全米35位。リード曲「Everybody Needs Love」は全米32位、ACチャートでは5位を記録しました。アート・ガーファンクル、チャカ・カーン、ナタリー・コール、マイケル・マクドナルドと豪華なゲストが参加し、繊細なメロディを多彩な声が彩ります。ガーファンクルが先に録音していた「Looking for the Right One」にも作家性が光ります。
- Kenny Loggins 『Celebrate Me Home』(1977) 🎵 試聴 ─ ロギンス&メッシーナ解散後のソロ第1作で、フィル・ラモーンとボブ・ジェームスが共同プロデュースし、全米27位、のちにプラチナ認定を受けました。スティーヴ・ガッドやリー・リトナー、リチャード・ティーらニューヨークと西海岸の名手が参加。デヴィッド・フォスターが共作した「Daddy’s Back」や、ゴスペル風に高揚するタイトル曲に、のちのAOR期へつながる都会的な感覚が早くも表れています。
- Loggins & Messina 『Native Sons』(1976) 🎵 試聴 ─ ジム・メッシーナのプロデュースで1976年1月に発表された、デュオとして6作目にして最後のスタジオ・アルバムで、全米16位を記録しました。メッシーナ作「Sweet Marie」のラテン風の軽快さと、ケニー・ロギンスがダン・ロギンスと書いたタイトル曲の伸びやかな歌が対照的。カントリー・ロックからソフトな西海岸サウンドへの移行期をとらえた作品で、両者のソロ作と聴き比べるのも一興です。
- Andrew Gold 『Andrew Gold』(1975) 🎵 試聴 ─ リンダ・ロンシュタットのバンドで編曲と多数の楽器を担っていたアンドリュー・ゴールドが、1975年にAsylumから発表したデビュー作で、プロデュースはチャック・プロトキン。ロンシュタットも参加しています。シングル「That’s Why I Love You」に聴けるビートルズ譲りのメロディ・センスと、多重録音を駆使した手作り感のある音作りは、のちの「Lonely Boy」へ連なる資質の出発点です。チャート上の成績は控えめだったため、ヒット曲から入りたい方は「Thank You for Being a Friend」「Never Let Her Slip Away」を収めた3作目『All This and Heaven Too』(1978)を聴いてから本作へさかのぼる順番もおすすめです。
- Bill LaBounty 『This Night Won’t Last Forever』(1978) 🎵 試聴 ─ ジェイ・センターのプロデュースでワーナー/カーブから発表された作品です。リー・リトナー、ディーン・パークス、レイ・パーカー・ジュニア、ジェフ・ポーカロ、リー・スクラーと、西海岸の名手が並ぶ演奏陣も見逃せません。タイトル曲は翌1979年にマイケル・ジョンソンが取り上げて全米19位のヒットに。ラバウンティ自身の少しハスキーな歌とエレクトリック・ピアノの温かな響きで味わう原曲には、また違った魅力があります。
- Marc Jordan 『Mannequin』(1978) 🎵 試聴 ─ スティーリー・ダンのプロデューサー、ゲイリー・カッツがデモを聴いてワーナーとの契約へ導き、自ら制作も手がけたマーク・ジョーダンのデビュー作です。カッツが普段起用する一流奏者が集い、ドナルド・フェイゲンも数曲に関わったとされます。「Survival」「Marina del Rey」の都会的なコード感と翳りのある歌声には、スティーリー・ダン好きの耳にも届く質感があります。のちに作曲家として多くの歌手へ曲を提供する才能の原点です。
- Ned Doheny 『Hard Candy』(1976) 🎵 試聴 ─ スティーヴ・クロッパーのプロデュースでColumbiaから発表されたネッド・ドヒニーの2作目です。デヴィッド・フォスターが鍵盤で参加し、ドン・ヘンリー、グレン・フライ、リンダ・ロンシュタットらがコーラスで加わる豪華な布陣。デヴィッド・キャシディやマキシン・ナイチンゲールも取り上げた「Get It Up for Love」の軽快なギター・カッティングと、ブルー・アイド・ソウルの粘りが同居する感覚は、シティポップ好きにも響くはずです。 詳細レビュー →
▶ 西海岸/ヨットロックをもっと聴く
- Boz Scaggs『Silk Degrees』 ─ このカテゴリの出発点
- Christopher Cross『Christopher Cross』 ─ グラミー5冠のデビュー作
- Ned Doheny『Hard Candy』 ─ 隠れ名盤への入口
- → AOR隠れ名盤10選 で、まだ知られていない西海岸を掘る
2. ブルーアイドソウル/メロウ系(20枚)
白人/黒人の境界が最も曖昧だった時代の、洗練されたソウル/AORハイブリッド。Bobby Caldwellを起点とする系譜と、Marvin Gaye/Stevie Wonder/EW&F の “ソウル側からのAOR寄り” 双方を含む。
- Bobby Caldwell 『Bobby Caldwell』(1978) 🎵 試聴 ─ TK Records傘下のCloudsから発表されたデビュー作で、全米21位、R&Bアルバム・チャートでは7位を記録しました。シングル「What You Won’t Do for Love」は全米9位。ホーンとエレクトリック・ピアノが絡む洗練されたサウンドとソウルフルな歌声は、R&Bリスナーにも広く受け入れられました。メロウなAORとソウルの接点を探るなら、まずここから入るのが分かりやすいでしょう。 詳細レビュー →
- Bobby Caldwell 『Heart of Mine』(1988) 🎵 試聴 ─ ボズ・スキャッグスと共作し、ボズの『Other Roads』(1988年)に収められてACチャート3位となったタイトル曲を、ボビー・コールドウェル自身が歌い直した作品です。他のアーティストへ提供した楽曲のセルフ・カバーも多く収められ、ピーター・セテラとエイミー・グラントが歌って全米1位となった「The Next Time I Fall」も含まれます。ソングライターとしての側面と、円熟したクールな歌声の両方を味わえる一枚です。
- Marvin Gaye 『I Want You』(1976) 🎵 試聴 ─ リオン・ウェアが中心となってプロデュースし、マーヴィン・ゲイらが加わった1976年作で、全米4位、R&Bアルバム・チャートでは1位を記録しました。ジャケットはアーニー・バーンズの絵画「The Sugar Shack」を基にしたもの。タイトル曲の官能的なグルーヴと、インストと歌入りで二度現れる「After the Dance」の浮遊感は、メロウ・グルーヴの源流として、AORやシティポップの作り手にも少なからぬ影響を与えました。 詳細レビュー →
- Stevie Wonder 『Songs in the Key of Life』(1976) 🎵 試聴 ─ 1974年から76年にかけて複数のスタジオで録音された2枚組の大作で、全米チャートに初登場1位、通算14週首位という記録を残し、グラミー賞最優秀アルバム賞を受賞しました。全米1位の「Sir Duke」「I Wish」に加え、「As」ではハービー・ハンコックがフェンダー・ローズを、「Another Star」ではジョージ・ベンソンがギターを弾いています。洗練されたコード進行とホーン・アレンジは、AORの作曲家たちの重要な参照点です。 詳細レビュー →
- Earth, Wind & Fire 『All ‘n All』(1977) 🎵 試聴 ─ モーリス・ホワイトがプロデュースし、ブラジルとアルゼンチンへの旅から得た着想を反映させた1977年作で、全米3位、R&Bアルバム・チャート1位を記録しました。ミルトン・ナシメントによる小品「Brazilian Rhyme」が挟まれ、ジャケットは長岡秀星が手がけています。R&B1位の「Serpentine Fire」の鋭いホーン、「Fantasy」の壮大なコーラスに、緻密に重ねられたアンサンブルの醍醐味が詰まっています。 詳細レビュー →
- Al Jarreau 『Breakin’ Away』(1981) 🎵 試聴 ─ ジェイ・グレイドンがプロデュースし、デヴィッド・フォスター、スティーヴ・ガッド、エイブラハム・ラボリエルらが脇を固めたLA録音の結晶です。全米9位、グラミー2部門を受賞。「We’re in This Love Together」の軽やかな歌い回しと、「Roof Garden」でのジョージ・デュークのローズに耳を傾けると、AORとジャズの境目が溶けていく感覚が味わえます。 詳細レビュー →
- George Benson 『Breezin’』(1976) 🎵 試聴 ─ トミー・リピューマのプロデュースのもと、1976年1月にハリウッドのキャピトル・スタジオで録音。全米アルバム・チャートとR&B、ジャズの3チャートで1位に輝きました。ボビー・ウーマック作の表題曲で聴けるしなやかなギターの歌心、レオン・ラッセル作「This Masquerade」でのスキャット・ユニゾンは、のちのメロウ・サウンドの原型といえるでしょう。 詳細レビュー →
- Bill Withers 『Menagerie』(1977) 🎵 試聴 ─ 代表曲「Lovely Day」を収めた、ビル・ウィザースの円熟期を示す作品です。共作者スキップ・スカーボロー、ギターにレイ・パーカーJr.を迎え、全米R&B16位、英国では彼の最大のヒット作になりました。長く伸ばすあのロングトーンはもちろん、「Lovely Night for Dancing」の軽いディスコ感や「Tender Things」のラテン風味も、都会的なソウルを好む耳にすっと馴染みます。 詳細レビュー →
- Donny Hathaway 『Live』(1972) 🎵 試聴 ─ 1971年にハリウッドのトルバドールとNYのビター・エンドで収録されたライヴ盤。ウィリー・ウィークス(b)、コーネル・デュプリー(g)らの演奏は、観客の熱気ごと音盤に封じ込められています。「What’s Goin’ On」で客席が自然に歌い出す瞬間、そして「Voices Inside (Everything Is Everything)」の長尺ベース・ソロは、ブルーアイドソウル系AORのルーツを辿るうえで欠かせない体験です。
- Roberta Flack 『Blue Lights in the Basement』(1977) 🎵 試聴 ─ ダニー・ハサウェイとのデュエット「The Closer I Get to You」が全米2位、R&B1位を記録したヒット作です。スティーヴ・ガッド、アンソニー・ジャクソン、ドン・グロルニックらNYの名手が参加し、端正で奥行きのある音像を作っています。二人の声が寄り添うバラードの温度感は、デュエットものが好きなAORファンにこそ聴いてほしいところ。全米8位、ゴールド認定。
- Sade 『Diamond Life』(1984) 🎵 試聴 ─ ロビン・ミラーのプロデュースで、1983年秋にロンドンのパワー・プラントで約6週間かけて録音されたデビュー作。1985年のブリット・アワードで最優秀英国アルバムに選ばれました。「Smooth Operator」でのスチュアート・マシューマンのサックスと、抑制の効いたシャーデー・アデュの歌声。熱を内に秘めたクールさは、80年代AORの洗練をUK側から体現しています。 詳細レビュー →
- Anita Baker 『Rapture』(1986) 🎵 試聴 ─ マイケル・J・パウエルがプロデュースした2作目で、R&Bチャート1位、全米500万枚を超えるヒットとなりました。グラミーでは最優秀女性R&Bボーカルと「Sweet Love」での最優秀R&Bソングを受賞。ロッド・テンパートン作の「Mystery」に漂う夜の気配と、低音域を豊かに響かせる歌唱は、クワイエット・ストームの理想形といえます。 詳細レビュー →
- Maxwell 『Urban Hang Suite』(1996) 🎵 試聴 ─ 90年代の作品ながら、AORの遺伝子を色濃く受け継ぐ一枚です。マーヴィン・ゲイと仕事をしたリオン・ウェアが「Sumthin’ Sumthin’」を共作し、ギターにはワー・ワー・ワトソンが参加。70年代メロウ・ソウルの職人とシャーデーのスチュアート・マシューマンが関わり、生音のグルーヴを重んじています。「Ascension (Don’t Ever Wonder)」の柔らかなファルセットは、ネオソウルとAORをつなぐ架け橋です。
- Erykah Badu 『Baduizm』(1997) 🎵 試聴 ─ ネオソウルの起点とされる作品が、なぜAOR100選に入るのか。その答えは「Drama」でベースを弾くロン・カーターの存在に象徴されます。ジャズの和声と生演奏の質感を、ヒップホップ以降のビートに溶け込ませる発想は、ジャズ・ミュージシャンを招いて洗練を追求したAORの手法と地続きです。「On & On」の気だるいスウィングを味わってください。全米2位、グラミー最優秀R&Bアルバム受賞。
- Norah Jones 『Come Away with Me』(2002) 🎵 試聴 ─ ブルーノートから登場し、アリフ・マーディンの手で仕上げられたデビュー作。マーディンはアヴェレージ・ホワイト・バンドらを手がけた名匠で、その起用自体が70年代の洗練されたポップの系譜を物語ります。グラミーで最優秀アルバムを含む主要部門を獲得。ジェシー・ハリス作「Don’t Know Why」での控えめなピアノと声の距離感は、ソフトな大人のポップを愛するAORリスナーの耳にもよく馴染みます。
- Karla Bonoff 『Karla Bonoff』(1977) 🎵 試聴 ─ ケニー・エドワーズのプロデュースによるデビュー作。リンダ・ロンシュタットが先に録音した「Someone to Lay Down Beside Me」「Lose Again」などを、作者本人が歌い直しています。ワディ・ワクテル、リー・スクラー、ラス・カンケルらの演奏に、ロンシュタットやグレン・フライのコーラスが重なる音は、まさにウエストコーストの空気。シンガー・ソングライター系AORの入口に最適です。
- Nicolette Larson 『Nicolette』(1978) 🎵 試聴 ─ テッド・テンプルマンがプロデュースしたデビュー作で、ニール・ヤング作「Lotta Love」が全米8位、ACチャート1位を記録しました。バックにはマイケル・マクドナルド、リンダ・ロンシュタット、ビル・ペインらが名を連ねます。ドゥービー・ブラザーズ人脈ならではの軽快なリズムと、伸びやかで親しみやすい歌声の組み合わせは、ヨット・ロック好きなら素通りできないはずです。 詳細レビュー →
- Rupert Holmes 『Partners in Crime』(1979) 🎵 試聴 ─ 「Escape (The Piña Colada Song)」が1979年最後の全米1位となり、続く「Him」も6位まで上昇したヒット作。ルパート・ホームズはバーブラ・ストライサンドに楽曲を提供してきたソングライター兼アレンジャーで、物語を一曲に詰め込む手腕が光ります。会話劇のような歌詞展開と、ホーンやストリングスを手際よく配したアレンジは、職人肌のAORを愛する方へ。
- Patrice Rushen 『Pizzazz』(1979) 🎵 試聴 ─ ジャズ・ピアニストとして出発したパトリース・ラッシェンが、チャールズ・ミムズJr.らと共同制作したエレクトラからの作品。ポール・ジャクソンJr.(g)、フレディ・ワシントン(b)、ンドゥグ・チャンセラー(ds)が支えます。R&B7位の「Haven’t You Heard」は、跳ねるベースと軽やかなエレピが心地よく、ブギー/ライト・ファンク寄りのAORが好きな人にぴったりです。 詳細レビュー →
- Average White Band 『AWB』(1974) 🎵 試聴 ─ スコットランド出身のバンドが、アリフ・マーディンのプロデュースのもとNYとマイアミで録音した2作目。インスト曲「Pick Up the Pieces」が全米シングル1位、アルバムも全米1位に輝きました。キレのあるホーン・リフと、2本のギターが刻むタイトなカッティングは、のちのブルーアイドソウル系AORにおけるリズム面の教科書ともいえる存在です。
▶ "白いソウル"をもっと聴く
- Bobby Caldwell『Bobby Caldwell』 ─ 白人ソウルの金字塔
- Al Jarreau『Breakin’ Away』 ─ Jay Graydon印のジャズボーカルAOR
- Bill Withers『Menagerie』 ─ "Lovely Day" の普遍
- → シティポップ名盤18選 で、この感触の日本版を聴く
3. ハードロック/アリーナ系AOR(15枚)
Foreigner、Journey、Styxら、80年代に商業的成功を収めたアリーナロック寄り作品群。AORの “メロディとサビ” の遺伝子を、ハードな音響で展開。
- Foreigner 『4』(1981) 🎵 試聴 ─ ロバート・ジョン・“マット”・ラングとミック・ジョーンズが共同プロデュースし、全米1位を10週保持した大ヒット作です。シンセサイザーには若きトーマス・ドルビー、「Urgent」のサックス・ソロにはジュニア・ウォーカーが参加。ハードな「Juke Box Hero」から、シンセの霧に包まれるバラード「Waiting for a Girl Like You」まで、アリーナ・ロックとAORの接点が凝縮されています。 詳細レビュー →
- Foreigner 『Foreigner』(1977) 🎵 試聴 ─ 英米混成バンドのデビュー作で、1976年12月にNYのヒット・ファクトリーなどで基本トラックを録音。ロンドンでの最初のミックスを破棄し、アトランティックでミックスし直した経緯があります。全米4位、500万枚超を記録。「Cold as Ice」の鋭いピアノ・リフと、ルー・グラムの張りのある声の組み合わせは、ハード系AORの基本形として今も新鮮に響きます。 詳細レビュー →
- Heart 『Bebe le Strange』(1980) 🎵 試聴 ─ マイク・フリッカーのプロデュースで、全米5位を記録したハートの作品。前作までのフォーク的な要素を残しつつ、ギター・ロックの鋭さを前面に押し出しています。タワー・オブ・パワーのホーンを迎えた「Even It Up」は意外性のある1曲。アンの力強いボーカルとナンシーのギターが絡み合う表題曲は、80年代の大ヒット期へ向かう過渡期の勢いを伝えます。
- Pat Benatar 『In the Heat of the Night』(1979) 🎵 試聴 ─ マイク・チャップマンとピーター・コールマンがプロデュースを分担したデビュー作。ギタリスト兼キーボーディストのニール・ジラルドが、以後のサウンドの骨格を築きました。全米12位、プラチナ認定。「Heartbreaker」のソリッドなギター・リフと、圧倒的な声量で押し切る歌唱は、ハードなロックとポップの歌心を両立させたい人に響くはずです。
- REO Speedwagon 『Hi Infidelity』(1980) 🎵 試聴 ─ ケヴィン・クローニンとゲイリー・リッチラスの2人のソングライターが競い合うように曲を書いた作品で、全米1位を15週保持し、1981年の年間最多売上を記録しました。クローニン作「Keep On Loving You」のピアノ・イントロから一気に盛り上がるサビ、リッチラス作「Take It on the Run」の骨太なギター。パワー・バラードの方程式を確立した一枚として聴く価値があります。 詳細レビュー →
- Styx 『Cornerstone』(1979) 🎵 試聴 ─ イリノイ州オークローンのパンプキン・スタジオで、バンド自身がプロデュースした作品。デニス・デ・ヤング作「Babe」はスティクス唯一の全米1位シングルとなり、アルバムも全米2位を記録しました。プログレ色を抑え、トミー・ショウ作の素朴な「Boat on the River」まで含めて、メロディ重視に舵を切ったスティクスのAOR的な側面が最も鮮明に表れています。 詳細レビュー →
- Kansas 『Leftoverture』(1976) 🎵 試聴 ─ ルイジアナ州のスタジオ・イン・ザ・カントリーで、ジェフ・グリックスマンと録音された4作目。全米5位、400万枚超のセールスを記録しました。ケリー・リヴグレン作「Carry On Wayward Son」のアカペラ・コーラスから重厚なリフへ流れ込む展開と、ロビー・スタインハートのヴァイオリンが織りなす叙情。プログレ寄りのAORを掘り下げたい人の出発点です。 詳細レビュー →
- Survivor 『Eye of the Tiger』(1982) 🎵 試聴 ─ 映画『ロッキー3』の主題歌となった表題曲が、全米・全英シングル1位に輝いた作品です。プロデュースはフランキー・サリヴァンとジム・ピートリック、ボーカルはデイヴ・ビックラー。有名なギター・リフの陰に隠れがちですが、「American Heartbeat」などの哀愁を帯びたメロディ作りにこそ、メロディアス・ハードの源流を感じ取れます。全米2位。 詳細レビュー →
- Asia 『Asia』(1982) 🎵 試聴 ─ キング・クリムゾンのジョン・ウェットン、イエスのスティーヴ・ハウとジェフ・ダウンズ、EL&Pのカール・パーマーが結集したスーパーグループのデビュー作。マイク・ストーンのプロデュースで、全米1位を9週保持し、1982年の年間1位となりました。「Heat of the Moment」はプログレの技巧を3分台のポップに凝縮した見本。キーボードの重ね方に注目して聴いてみてください。 詳細レビュー →
- Fleetwood Mac 『Rumours』(1977) 🎵 試聴 ─ ケン・キャレイ、リチャード・ダシュートとバンド自身が制作し、サウサリートのレコード・プラントなど複数のスタジオで録音された作品。全米1位を通算31週保持し、グラミー年間最優秀アルバムを受賞しました。3人のソングライターがそれぞれの持ち味を出し合い、「Dreams」の浮遊感、「Go Your Own Way」の疾走感と、曲ごとに異なる表情を見せます。AOR以前と以後をつなぐ重要作です。 詳細レビュー →
- Bryan Adams 『Reckless』(1984) 🎵 試聴 ─ 長年の共作者ジム・ヴァランスと曲を書き、ボブ・クリアマウンテンと共同制作した作品。バンクーバーのリトル・マウンテン・サウンドで録音され、全米1位、6枚のシングルすべてが全米トップ15入りを果たしました。「Run to You」の乾いたギター・アルペジオと、ストレートなビートで押す「Summer of ’69」。シンプルな8ビートの中に、歌メロの強さが際立ちます。 詳細レビュー →
- Chicago 『Chicago 17』(1984) 🎵 試聴 ─ デヴィッド・フォスターのプロデュースで、シカゴ最大のセールスを記録した作品。フォスターはこの年のグラミーで最優秀プロデューサー賞を獲得しました。ピーター・セテラとフォスター共作の「You’re the Inspiration」、スティーヴ・キプナーらが書いた「Hard Habit to Break」では、ホーン・セクションよりもシンセとストリングスが主役。80年代AORバラードの完成形を確かめられます。
- Huey Lewis & The News 『Sports』(1983) 🎵 試聴 ─ ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースがセルフ・プロデュースし、ボブ・クリアマウンテンがミックスの大半を手がけた作品。全米1位、全米トップ20入りのシングルを5曲も生みました。「The Heart of Rock & Roll」の陽気なシャッフルや「If This Is It」のドゥーワップ風コーラスには、ルーツへの敬意と80年代らしい明快な音作りが同居しています。
- Mr. Mister 『Welcome to the Real World』(1985) 🎵 試聴 ─ リチャード・ペイジらのバンドが、ポール・デヴィリアーズと共同制作した2作目。「Broken Wings」「Kyrie」が連続で全米1位となり、アルバムも全米1位に輝きました。パット・マステロットの精密なドラムと、深いリヴァーブに包まれたシンセの音像。ペイジの透明感のあるハイトーンと合わせ、85年という時代の空気が封じ込められています。 詳細レビュー →
- Glenn Frey 『The Allnighter』(1984) 🎵 試聴 ─ イーグルスのグレン・フライが、ジャック・テンプチンとの共作を軸に作り上げたソロ2作目。バリー・ベケットらと共同制作し、「Sexy Girl」「Smuggler’s Blues」が全米トップ20入りしました。マッスル・ショールズ系のミュージシャンが生む粘りあるグルーヴに、ハート・アタック・ホーンズの彩り。ウエストコーストのソウル志向が感じられる、80年代版のフライ像です。
▶ アリーナAORをもっと聴く
- Journey『Escape』 ─ アリーナロックの頂点
- REO Speedwagon『Hi Infidelity』 ─ 全米1位9週の大本命
- Foreigner『4』 ─ パワーバラードの極北
- → 80年代AOR名盤10選 で年代順に俯瞰する
4. ジャズ・フュージョン系(15枚)
AORのセッションマンを輩出した源流。Larry Carlton、Lee Ritenour、Bob Jamesらの作品は、AOR音響の楽器使用法そのものを定義した。
- Weather Report 『Heavy Weather』(1977) 🎵 試聴 ─ ジョー・ザヴィヌルとジャコ・パストリアスが共同プロデュースし、ノース・ハリウッドのデヴォンシャー・スタジオで録音された作品。ジャズ・チャート1位に加えプラチナ認定を受け、フュージョンが大衆に届いた象徴となりました。「Birdland」の親しみやすいテーマと、フレットレス・ベースが歌うように動く「A Remark You Made」。メロウなAORの延長で楽しめる入口です。
- Pat Metheny Group 『Pat Metheny Group』(1978) 🎵 試聴 ─ ECMのマンフレート・アイヒャーのプロデュースで、1978年1月にオスロのタレント・スタジオで録音されたグループ名義の第1作。ライル・メイズ、マーク・イーガン、ダニー・ゴットリーブとの4人編成です。ライヴの定番となった「Phase Dance」での12弦ギターの煌めきと、メイズのシンセが描く広がり。風景が見えるような音像は、ドライブ向きのAORと並べても違和感がありません。
- Spyro Gyra 『Morning Dance』(1979) 🎵 試聴 ─ サックス奏者ジェイ・ベッケンスタインが中心となった2作目で、表題曲がアダルト・コンテンポラリー・チャート1位、全米24位のヒットとなりました。デイヴ・サミュエルズのマリンバとスティール・ドラムが生むトロピカルな軽さが最大の特徴。ブレッカー兄弟もゲストで参加しています。リゾート感覚のAORやシティポップ好きなら、すぐに打ち解けられる音です。
- The Crusaders 『Street Life』(1979) 🎵 試聴 ─ Randy Crawfordボーカル参加
- Yellowjackets 『Yellowjackets』(1981) 🎵 試聴 ─ ラッセル・フェランテ、ジミー・ハスリップ、リッキー・ローソン、そしてロベン・フォードによるデビュー作で、プロデュースはトミー・リピューマ。ジャズ・チャート16位を記録しました。「Matinee Idol」などで聴けるフォードのブルージーなギターと、フェランテの洗練された鍵盤の対比が鮮やか。LAのセッション・シーンとAORの距離の近さを実感できる作品です。
- Bob James 『Touchdown』(1978) 🎵 試聴 ─ ボブ・ジェームスの6作目で、自身のレーベル、タッパン・ジーから発表されました。米ドラマ『タクシー』のテーマに採用された「Angela」を収録し、ジャズ・チャート1位を獲得。エリック・ゲイル、スティーヴ・ガッド、デヴィッド・サンボーン、アール・クルーらNYの名手が集結しています。フェンダー・ローズの柔らかな響きは、スムースジャズの原風景そのものです。
- Dave Grusin 『Mountain Dance』(1980) 🎵 試聴 ─ ベースにマーカス・ミラー、ドラムにハーヴィー・メイソン、ギターにジェフ・ミロノフという布陣で、グルーシン自身はピアノとシンセを弾き分けています。タイトル曲「Mountain Dance」のアコースティック・ピアノの澄んだ響きと、「Rag Bag」で跳ねるミラーのベースの対比が聴きどころです。映画音楽家らしい情景描写の巧さがあり、歌のないAORを探している方の入口に向いた一枚です。
- David Sanborn 『Hideaway』(1980) 🎵 試聴 ─ ニューヨークのセレブレーション・スタジオで1979年に録音され、翌1980年2月に発表された作品で、米ジャズ・チャート2位を記録しました。表題曲ではスティーヴ・ガッドのドラムとハイラム・ブロックのギターがタイトに絡み、サンボーンのアルトが泣きの音色で切り込みます。ジェイムス・テイラーがコーラスで加わる「Carly’s Song」の柔らかさも、AORファンには見逃せないところでしょう。
- Tom Scott 『Apple Juice』(1981) 🎵 試聴 ─ 1981年1月、ニューヨークのライヴハウス、ボトムラインでの演奏を収めたライヴ盤です。エリック・ゲイルとヒュー・マクラッケンのギター、リチャード・ティーの鍵盤、マーカス・ミラーとスティーヴ・ガッドのリズム隊という、当時のNYセッション界の顔ぶれが揃っています。ゲイルのブルージーなギターとトムのテナーの掛け合いに注目すると、スタジオ盤とは違う熱気が伝わってきます。スタッフ周辺の音が好きな方にもおすすめです。
- Stuff 『Stuff』(1976) 🎵 試聴 ─ ゴードン・エドワーズ、リチャード・ティー、エリック・ゲイル、コーネル・デュプリー、クリス・パーカー、スティーヴ・ガッドというNYの腕利きが組んだバンドのデビュー作です。プロデュースはハーブ・ラヴェルとトミー・リピューマ。「Foots」のゆったりしたグルーヴや、ティーのゴスペル由来のピアノとオルガンが印象に残ります。ツイン・ギターとツイン・ドラムが生む余白の多いアンサンブルは、AORのバックで鳴る名手たちの素顔を知る手がかりにもなります。
- Steps Ahead 『Steps Ahead』(1983) 🎵 試聴 ─ 前身のステップスは日本コロムビアに3作を残しており、本作はグループ名を改めての米国エレクトラ・ミュージシャン盤です。マイケル・ブレッカー、マイク・マイニエリ、イリアーヌ・イリアス、エディ・ゴメス、ピーター・アースキンの5人で、NYのパワー・ステーションで録音されました。ドン・グロルニク作の「Pools」では、ヴィブラフォンとテナーが重なる透明感のある響きが続きます。都会的で洗練されたジャズに触れたい方に向いています。
- Marcus Miller 『Tales』(1995) 🎵 試聴 ─ マーカス・ミラーが自らプロデュースした1995年作で、グラミーの最優秀コンテンポラリー・ジャズ・パフォーマンス部門にノミネートされました。曲間にはマイルス・デイヴィスらの肉声が挟まれ、黒人音楽の歴史をたどる構成になっています。ミシェル・ンデゲオチェロが歌う「Rush Over」や、エリック・ゲイルに捧げた「Eric」では、スラップだけではない歌心あるベースが楽しめます。80年代のセッション期から彼を知る方にも響く一枚です。
- Lee Ritenour 『Friendship』(1979) 🎵 試聴 ─ リトナーがドン・グルーシン、アーニー・ワッツ、エイブラハム・ラボリエル、アレックス・アクーニャ、スティーヴ・フォアマンと組んだグループ「フレンドシップ」名義のエレクトラ盤で、プロデュースはリトナーとグルーシンが共同で務めています。冒頭の「Bullet Train」ではラボリエルの弾むベースとアクーニャのドラムが推進力を生み、ワッツのサックスが明るく歌います。ジェントル・ソウツ期のリトナーが好きな方に聴いてほしい作品です。
- Larry Carlton 『Sleepwalk』(1982) 🎵 試聴 ─ ラリー・カールトンのセルフ・プロデュース作で、ドラムにはスティーヴ・ガッドとジェフ・ポーカロ、ベースにエイブ・ラボリエルが参加しています。サント&ジョニーのカバーである表題曲「Sleepwalk」では、ゆったりしたテンポの中でギターのトーンの美しさが際立ちます。デヴィッド・サンボーンが加わる7分半の「Upper Kern」も聴き逃せません。スティーリー・ダンでの彼の演奏から入った方にもなじみやすい内容です。
- Ramsey Lewis 『Sun Goddess』(1974) 🎵 試聴 ─ アース・ウィンド&ファイアーのモーリス・ホワイトがプロデュースに加わり、フィリップ・ベイリーやヴァーディン・ホワイトも演奏に参加した作品です。米ビルボードのR&Bとジャズの両アルバム・チャートで1位となり、RIAAのゴールド認定も受けています。表題曲「Sun Goddess」のエレピとコーラスが織りなす浮遊感は、後のフュージョンやAORにも通じるものがあります。EW&Fのサウンドが好きな方なら、すぐになじめるはずです。
- The Crusaders 『Street Life』(1979) 🎵 試聴 ─ ウィルトン・フェルダー、ジョー・サンプル、スティックス・フーパーの3人体制で制作された作品で、米ビルボードのジャズ・アルバム・チャート1位、総合チャートでも18位を記録しました。ランディ・クロフォードが歌う11分超の表題曲「Street Life」はシングルとして全英5位のヒットになっています。サンプルのエレピとストリングスが描く夜の街の情景、クロフォードの伸びやかな歌声に耳を傾けると、フュージョンとAORの距離の近さがよくわかります。 詳細レビュー →
▶ フュージョン/スムースジャズをもっと聴く
- Larry Carlton『Larry Carlton』 ─ "Room 335" を擁する、AORギターの教科書
- George Benson『Breezin’』 ─ スムースジャズの祖となった1976年の決定盤
- Airplay『Airplay』 ─ David Foster と Jay Graydon の制作術が結晶した1枚
- → スムースジャズ/フュージョン名盤8選 が、このカテゴリの入門ガイドです
5. ジャパニーズAOR/シティポップ(20枚)
米国AORを血肉化し、独自に展開させた日本独自の到達点。2010年代以降、世界的シティポップ・ブームで再評価された作品群を含む。
- 山下達郎 『Ride on Time』(1980) 🎵 試聴 ─ 日立マクセルのカセットテープCMに起用された表題曲をアルバム用に録り直して収めた1980年の作品です。青山純、伊藤広規、難波弘之、椎名和夫らのバンドが固まりつつあった時期で、「RIDE ON TIME」では青山のドラムと伊藤のベースが生む推進力を存分に味わえます。5曲目に置かれた「夏への扉」のメロディの美しさも格別です。山下達郎のサウンドの土台がどこで築かれたのかを知るうえで欠かせない作品です。
- 山下達郎 『For You』(1982) 🎵 試聴 ─ ジャケットのイラストは鈴木英人。RCA/AIRレーベル最後のオリジナル・アルバムで、前年に27曲を録音するほど制作環境が充実した時期の成果です。冒頭の「SPARKLE」は、テレキャスターのカッティングを生かすために書かれた曲とされ、その歯切れのよいギターが全体のトーンを決めています。ビールCM用に書かれた「LOVELAND, ISLAND」の開放感とあわせて、80年代の夏のドライブを思わせるサウンドを楽しめます。
- 角松敏生 『Sea Breeze』(1981) 🎵 試聴 ─ 1981年に発表された角松敏生のデビュー作です。ドラムには村上”ポンタ”秀一や林立夫、ギターには鈴木茂や松原正樹が名を連ね、コーラスにはEPOも参加しています。全8曲を自ら書き、同日にシングル発売された「YOKOHAMA Twilight Time」など、海辺と都会を往き来する視点が早くも定まっています。「Dancing Shower」の軽快なギター・カッティングは、後の角松サウンドの原点を感じさせます。
- 角松敏生 『On the City Shore』(1983) 🎵 試聴 ─ 杏里への楽曲提供を経て、本作から角松敏生自身がプロデュースと編曲を担う体制になりました。全曲の作詞・作曲・編曲を自ら手がけ、曲同士をクロスフェードでつなぐ構成にもこだわりが見えます。「TAKE YOU TO THE SKY HIGH」のホーン・アレンジと、先行シングル版のトランペットに代わって入った友成好宏のシンセ・ソロにも注目です。夏のリゾート感から都会の夜へ移る直前の、角松の過渡期をとらえた作品です。
- 大滝詠一 『A Long Vacation』(1981) 🎵 試聴 ─ 作詞は1曲を除いて松本隆、ジャケットは永井博のイラストです。1982年10月に世界で初めてCD化された50タイトルの一つに選ばれ、発売1年でミリオンを超えました。大瀧詠一がフィル・スペクター流の音の壁を日本語ポップスで鳴らした作品で、「君は天然色」の重層的な音像や「カナリア諸島にて」の涼しげなアレンジがよく知られています。AORの精緻な音作りが好きな方なら、ミックスの奥行きにも耳を傾けてみてください。
- 松原みき 『Pocket Park』(1980) 🎵 試聴 ─ 松原みきの初のオリジナル・アルバムで、1979年のデビュー曲「真夜中のドア〜stay with me」と2枚目のシングル「愛はエネルギー」を収めています。オリコン最高位は13位でした。「真夜中のドア」はシティポップ再評価の流れで海外でも広く聴かれるようになり、16ビートの軽快なリズムに乗るハスキーな歌声が今も新鮮に響きます。洋楽AORのグルーヴを日本語で味わいたい方に勧めたい一枚です。
- 竹内まりや 『Variety』(1984) 🎵 試聴 ─ 活動休止を経て、竹内まりやが本格的に復帰した作品です。最終的に全曲を本人が作詞・作曲し、山下達郎が編曲とプロデュースを担う形になったとされています。オリコンでは初登場1位を獲得しています。「プラスティック・ラヴ」のベースとリズム・ギターが刻むグルーヴは、今では海外のリスナーにもよく知られています。
- 杏里 『Heaven Beach』(1982) 🎵 試聴 ─ 杏里の4作目で、全編の編曲は瀬尾一三が担当しています。作家陣にはブレッド&バター、小林武史、角松敏生らが加わり、前作のヨーロッパ志向から軽やかなポップスへと舵を切った作品です。発売当時のオリコン最高位は89位と控えめでしたが、シティポップ再評価の中で「Last Summer Whisper」が海外でも注目を集めました。後に角松プロデュースで展開する杏里サウンドの前夜として聴くと興味深いはずです。
- 寺尾聰 『Reflections』(1981) 🎵 試聴 ─ 全曲の作曲を寺尾聰、編曲を井上鑑が手がけた初のオリジナル・アルバムです。オリコンで通算12週の1位を獲得し、1981年度の年間アルバム1位にも輝きました。大ヒットした「ルビーの指環」はもちろん、「HABANA EXPRESS」のラテン風リズムや「北ウィング」の乾いたギターなど、井上の引き締まったアレンジに耳を向けると発見があります。俳優としての顔とは別に、洋楽AORに通じる質感を備えた作品です。
- 八神純子 『Communication』(1985) 🎵 試聴 ─ 八神純子がムーン・レコードから発表した作品です。プロデュースとヘッド・アレンジャーはJ.J.スタンレーで、編曲には矢島賢、大村雅朗、鷺巣詩郎も参加し、サックスで土岐英史が加わっています。初期のニューミュージック的な歌謡性とは異なる、80年代半ばらしい鍵盤主体の音像が特徴です。エレクトロ・レゲエ調のB面曲は、海外の日本音楽コンピレーション『Tokyo Riddim 1976-1985』にも選ばれました。
- EPO 『GOODIES』(1980) 🎵 試聴 ─ EPOの2作目で、本人にとって初の海外録音となった作品です。ニューヨーク、ロサンゼルス、東京でレコーディングされ、編曲は清水信之と山下達郎が3曲ずつ担当、コーラスには山下や大貫妙子も参加しています。同日にシングルで出た「Park Ave.1981」の弾むリズムや、EPOの希望で取り上げた山下のカバー「パレード」が聴きどころです。シュガー・ベイブ周辺の音を好む方に勧めたい一枚です。
- 中原めいこ 『2時までのシンデレラ -FRIDAY MAGIC-』(1982) 🎵 試聴 ─ 1982年12月に出た中原めいこの2作目で、「-FRIDAY MAGIC-」の副題がついています。『COCONUTS HOUSE』『mint』とともに初期三部作と呼ばれ、「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」のヒット以前のシンガーソングライターとしての顔が見える作品です。CDは流通量が少なく高値で取引され、2022年には数量限定でアナログ盤が復刻されました。軽快なメロディとダンサブルなリズムの組み合わせに注目してください。
- 高橋幸宏 『Saravah!』(1978) 🎵 試聴 ─ 高橋幸宏の初ソロ作で、坂本龍一が共同プロデュースを務め、リズムの編曲は高橋自身、ブラスとストリングス、キーボードの編曲は坂本が担当しています。ベースは細野晴臣、ギターには高中正義、大村憲司、鈴木茂らが参加し、コーラスには山下達郎や吉田美奈子も加わっています。「VOLARE」や「C’EST SI BON」といったスタンダードを洒脱に料理しつつ、「SARAVAH!」ではヨーロッパ映画のような洗練を聴かせます。初期YMOのフレンチ志向の源流としても楽しめる作品です。
- 久保田利伸 『Shake It Paradise』(1986) 🎵 試聴 ─ 1986年、久保田利伸がCBS・ソニーから発表したデビュー作です。前年に自主制作したデモテープの曲を再アレンジした曲を含んでいます。ドラマのエンディングに使われた「Missing」のスロー・バラードと、ブリヂストンCMで流れた「流星のサドル」のファンク色の強いビートとの振れ幅が魅力です。日本語でブラック・コンテンポラリーに挑んだ先駆的な作品として、AORの延長で聴いても新鮮です。
- 須藤薫 『PARADISE TOUR』(1981) 🎵 試聴 ─ 1981年7月、CBS・ソニーから出た須藤薫の2作目です。「思い出のスクール・ラブ」から「24トゥデイ」まで全10曲、60年代アメリカン・ポップスの雰囲気をまとった明るいメロディが並びます。松任谷由実の『SURF&SNOW』でのコーラスで注目された透明感のある声が、オールディーズ風のアレンジに軽やかに乗ります。大滝詠一や杉真理が描いたナイアガラ系ポップスが好きな方なら、すんなり楽しめるはずです。
- 鈴木雅之 『mother of pearl』(1986) 🎵 試聴 ─ ラッツ&スター休止後に始まったソロ活動の第一作で、プロデュースは大沢誉志幸です。同時発売のシングル「ガラス越しに消えた夏」を含む10曲を収め、オリコン最高位は20位でした。大沢の書くメロディと鈴木雅之の甘く粘りのある歌声の相性は抜群で、ドゥーワップ育ちのボーカルが80年代半ばのシンセ・サウンドに溶け込む様子が楽しめます。ソウル寄りのAORを好む方にも響く内容です。
- 山本達彦 『TO BE』(1986) 🎵 試聴 ─ 山本達彦の通算11作目で、1986年の発表です。それまでのラブソング中心の作風から一転し、作詞の売野雅勇らと組んで人生観を描く方向へ進みました。編曲には佐藤準と大村雅朗が名を連ね、表題曲「TO BE」や「SHAKE SHAKE SHAKE」では力強い8ビートが前面に出ます。ピアノを軸にした都会派のメロディはそのままに、骨太になったサウンドを聴き比べると変化がよくわかります。
- 笠井紀美子 『Tokyo Special』(1977) 🎵 試聴 ─ ジャズ・シンガーの笠井紀美子が、全編日本語詞で取り組んだ1977年の作品です。作詞は安井かずみ、作曲には筒美京平、山下達郎、矢野顕子らが名を連ね、日野皓正をはじめとするジャズ・ミュージシャンが演奏に加わっています。ジャケット写真は篠山紀信。シティポップ再評価の中で特に人気を集めた「バイブレイション」では、ジャズの即興性と歌謡のメロディが自然に溶け合っています。
- 飯島真理 『Rosé』(1983) 🎵 試聴 ─ 坂本龍一がプロデュースした飯島真理のデビュー作で、作詞・作曲はすべて本人が手がけています。のちに愛称の由来にもなった「まりン」をはじめ、透明感のある歌声と坂本のシンセを生かした凝ったアレンジとの組み合わせが独特の世界をつくっています。自作曲を歌うシンガーソングライターの感性と、YMO周辺の音作りが出会った作品として、テクノポップとシティポップの境界に興味がある方に勧めたい一枚です。
- 来生たかお 『Sparkle』(1981) 🎵 試聴 ─ 1981年7月にキティ・レコードから発表された来生たかおの5作目で、オリコン最高位は54位でした。同じ年の暮れには「夢の途中」を表題とするアルバムが2位を記録しており、本作はブレイク直前の作品にあたります。「夢の途中」で広く知られる前の、穏やかでメロディ重視の作風がすでに整っていることがわかります。ピアノを中心にした柔らかなサウンドは、ソフトなAORや静かな夜に聴く音楽を探している方に合うでしょう。
▶ 日本のAORをもっと聴く
- → シティポップ名盤18選 ─ 18枚を1本で俯瞰する決定版ガイド
- → シティポップの源流としてのAOR ─ 西海岸サウンドが東京で花開いた経緯
AOR の “聴く順番” — 初心者へのおすすめ5枚
- Boz Scaggs『Silk Degrees』(1976) 🎵 試聴 — まず “Lowdown” の3分間で「これがAORか」を体験 → レビューを読む
- Toto『Toto IV』(1982) 🎵 試聴 — “Africa” “Rosanna” のフックは即効性最強 → 入門ガイドを読む
- Bobby Caldwell『Bobby Caldwell』(1978) 🎵 試聴 — “What You Won’t Do for Love” のメロウさ → レビューを読む
- Steely Dan『Aja』(1977) 🎵 試聴 — “Peg” の凄まじい緻密さで奥深さを知る → 同じSteely Danの『Gaucho』レビュー
- Donald Fagen『The Nightfly』(1982) 🎵 試聴 — “I.G.Y.” で AORの完成形を確信する → レビューを読む
📀 気になった1枚をレコードで聴いてみたくなったら、盤の選び方と最初のプレーヤー選びをまとめた「AORをアナログ盤で楽しむ入門」へ。
AOR名盤を通して聴く・手元に置く
気になった作品は、まずサブスクや配信でアルバムを通して聴いてみてほしい。何度も戻ってくる1枚が見つかったら、CDやレコードで手元に置く——AORBreezeがすすめる順番はこれだ。盤で聴くと、セッション・ミュージシャンの細かな演奏やコーラスの重なりに改めて気づくことが多い。
※ 本セクションのリンクにはアフィリエイトプログラムによる紹介を含みます。
続けて読みたい個別レビュー
- タイトルの意味は「ない」、ヒットは「事故」──Boz Scaggs『Silk Degrees』(1976)
- ヒット4曲、収録2曲──Boz Scaggs『Middle Man』(1980)
- 1本のカセットから──Eagles『Hotel California』(1976)
- 39分03秒に入らなかった1曲──Fleetwood Mac『Rumours』(1977)
- 【AOR入門の1枚】TOTO『TOTO IV〜聖なる剣』を最初に聴くべき理由|試聴・聴きどころガイド
- 20分で書いた曲が半年で1位に──Mr. Mister『Welcome to the Real World』(1985)
- 9位の曲と40年目のダイヤモンド──Journey『Escape』(1981)
- 顔を伏せたジャケットとB面の「What You Won’t Do for Love」──Bobby Caldwell『Bobby Caldwell』(1978)
- 床に落ちていたカセットが作者を追い越した──Nicolette Larson『Nicolette』(1978)
本記事は、AORBreeze(aorbreeze.com)が独自に執筆したオリジナル選盤です。各アルバムへのアフィリエイトリンクには紹介報酬を含みます。100選には継続的に追加・調整を加える予定です。
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