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Asia – Asia 完全レビュー|プログレ大物4人が結成したスーパーグループのデビュー作(1982)

Asia デビュー作 レビュー
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1982年3月、Asia はデビュー・アルバム『Asia』を Geffen Records からリリースした。King Crimson / UK 出身の John Wetton(ヴォーカル/ベース)、Yes 出身の Steve Howe(ギター)、Yes / Buggles 出身の Geoff Downes(キーボード)、Emerson, Lake & Palmer 出身の Carl Palmer(ドラム)——70年代英国プログレッシブ・ロック界の大物4人が結成したスーパーグループの本作は、リリース直後から熱狂的な反響を呼び、Billboard 200 で9週連続1位、最終的に米国だけで400万枚(4倍プラチナ)を売り上げた。”Heat of the Moment” は Billboard Hot 100 で4位、”Only Time Will Tell” も17位の大ヒット。プログレッシブ・ロックの構造的複雑さと、80年代AORの商業性を完璧に融合させた、歴史的なデビュー作である。

Asia - Heat of the Moment (Official Music Video)
目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • Heat of the Moment — プログレ大物4人が、シンプルなアリーナAORに到達した瞬間を捉えた代表曲
  • Steve Howe のギター、Carl Palmer のドラム、Geoff Downes のシンセ。70年代プログレの “技術” が80年代AORの “メロディ” に奉仕する稀有な作例
  • John Wetton のソフトな声質。King Crimson 時代の “Starless” の繊細さを、ポップ・ロックの語彙で再展開

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背景:プログレ大物4人の合流

1981年、英国プログレッシブ・ロック・シーンは “終焉” を迎えつつあった。Yes、Genesis、King Crimson などの主要バンドは活動停止や音楽性の変化、メンバー脱退で揺れていた。この状況下で、Geffen Records のオーナー David Geffen は、プログレ大物たちを集めた “スーパーグループ” の構想を提案。John Wetton(当時 Wishbone Ash を脱退)、Steve Howe(Yes から脱退)、Geoff Downes(Yes 加入を経て脱退)、Carl Palmer(ELP 解散後)の4人が、Wetton と Downes のソングライティング・コンビを中核に集まった。

本作の最大の革新は、プログレッシブ・ロック大物4人が、自身のプログレ的な技巧を抑制し、4分台のポップ・ロック楽曲に奉仕する方向性を選んだことにある。これは Geffen の商業的な判断による部分も大きいが、Wetton と Downes 自身が「プログレッシブ・ロックの未来は、構造的複雑さではなくメロディの強度にある」と考えていたことも反映している。

プロデュースは Mike Stone(Queen のエンジニア、Journey『Frontiers』のプロデューサー)。録音は1981年中盤〜1982年初頭、Marquee Studios(ロンドン)と Townhouse Studios で。

全曲レビュー(Side A → Side B)

Side A

1. Heat of the Moment(3:50)★ ティアA

本作のオープナーにして先行シングル。Billboard Hot 100 で4位、Mainstream Rock チャート1位。Wetton / Downes の共作。冒頭の Carl Palmer のドラム・カウント、続く Geoff Downes のシンセ・リフ、Steve Howe のリズム・ギター、John Wetton の力強いヴォーカル——すべてが完璧に組み合わさった、80年代AORの代表的楽曲。

歌詞は、自身の若さゆえの過ちを後悔する大人の物語。プログレ大物4人がここまでポップなアプローチに踏み込んだことに、当時のプログレ・ファンは衝撃を受けたが、結果的に Asia の代名詞となった。

2. Only Time Will Tell(4:46)★ ティアA

シングル・カット(Billboard Hot 100 で17位、Mainstream Rock 1位)。本作のもう一つの代表曲。Wetton / Downes の共作。Steve Howe のクラシック・ギターのアルペジオが、楽曲の “繊細さ” を完璧に支える。Wetton のヴォーカル史上もっとも内省的な歌唱の一つ。

3. Sole Survivor(4:48)

本作のなかで最もハードロック寄りの楽曲。Steve Howe のギター・ソロが、Yes 時代の技巧の片鱗を見せる。

4. One Step Closer(4:18)

Wetton 主導のミドル・テンポ。本作のなかでもっとも内省的な歌詞を持つ楽曲。

5. Time Again(4:45)

Carl Palmer のドラムが本作中もっとも目立つ楽曲。ELP 時代の彼の技巧が、AOR の語彙のなかで再展開される。

Side B

6. Wildest Dreams(5:13)

シングル・カット(Mainstream Rock チャート17位)。Wetton と Downes の共作。5分超の長尺で、本作のなかで最もプログレッシブ・ロック寄りの構造を持つ楽曲。

7. Without You(5:05)

本作中もっとも繊細なバラード。Steve Howe のクラシック・ギターが終始リードする。

8. Cutting It Fine(5:35)

Wetton と Howe の共作。本作のなかで Steve Howe のソングライティングの寄与が最も大きい1曲。

9. Here Comes the Feeling(5:42)

クロージング。本作のなかでもっとも長尺な楽曲。プログレッシブ・ロック的な構造的複雑さを最も保持した楽曲で、アルバム全体を壮大に閉じる。

参加メンバー(Asia オリジナル4人組)

  • Lead Vocals/Bass: John Wetton(元 King Crimson / UK / Wishbone Ash)
  • Guitar: Steve Howe(元 Yes)
  • Keyboards: Geoff Downes(元 Yes / Buggles)
  • Drums: Carl Palmer(元 ELP)
  • Producer: Mike Stone

この4人組は、70年代英国プログレッシブ・ロックの “オールスター” を文字通り体現している。John Wetton の声は King Crimson “Starless”、UK “In the Dead of Night” などで確立した独特の繊細さを持つ。Steve Howe は Yes “Roundabout”、ELP は “Tarkus”、Buggles は “Video Killed the Radio Star” ——すべてが本作に流れ込んでいる音楽的人脈である。

プログレ後の “AOR への着地”

本作の音楽史的な重要性は、70年代プログレッシブ・ロックが80年代AORへとどう進化したかを、最も鮮明に示す事例である点にある。Yes は1983年の『90125』(本作と同じ Geoff Downes が初期参加) で、Trevor Rabin を加えてポップ寄りに変化した。Genesis は Phil Collins 主導で80年代後半に大ヒットを連発した。King Crimson は Adrian Belew を加えてニューウェーブ寄りに変化した。

Asia はこれらの “プログレ後の進化” の中で、最も商業的に成功した事例である。技巧を抑制し、メロディの強度を最大化する方向性は、80年代AOR / アリーナロックの中核的な美学と完璧に合致した。本作は、プログレッシブ・ロックの “技術” が AOR の “感情” に奉仕する稀有な作例として、現在も再評価が続いている。

このアルバムの位置付け

  • 1982: Asia(本作、デビュー作)
  • 1983: Alpha(”Don’t Cry” を擁する続編)
  • 1985: Astra(メンバー対立で衰退)
  • 2008: Phoenix(オリジナル4人組再結成)

私的な感想——プログレ大物の “降臨”

“Heat of the Moment” を初めて聴いたとき、僕はそれが Steve Howe や Carl Palmer の演奏だとはまったく想像できなかった。Yes の “Roundabout” のあのギター・ソロの作者が、これほどシンプルなロック・ナンバーに参加しているという事実が、AOR の “成熟” の意味を僕に教えてくれた。技巧を見せびらかすのではなく、楽曲に奉仕する——これこそが本物のミュージシャンの姿勢である。

本作は、70年代プログレッシブ・ロックと80年代AORの “橋” として、音楽史的に極めて重要な位置を占める。AOR を語るうえで、Asia のこのデビュー作は決して見落としてはならない、必修科目である。

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