ヒット4曲、収録2曲──Boz Scaggs『Middle Man』(1980)

Boz Scaggs Middle Man AOR名盤ガイドのアイキャッチ(レコードモチーフ・ジャケット不使用)
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1980年、Boz Scaggs は Billboard Hot 100 のトップ20に4曲を送り込んだ。「Breakdown Dead Ahead」が15位、「Jojo」が17位、「Look What You’ve Done to Me」が14位、そして年をまたいで「Miss Sun」が14位。キャリアで最も多くのシングル・ヒットが集中した年である。

ところが、この4曲のうち1980年4月発売のアルバム『Middle Man』に収録されているのは前半の2曲だけだ。残りの2曲は、映画のサウンドトラックとベスト盤という、アルバムの「外側」から出てきた。そして『Middle Man』は、Boz が1988年の『Other Roads』まで8年間新作を出さなかった、その手前の最後のスタジオ盤でもある。

この記事は「4曲のうち2曲」という数字を軸に『Middle Man』を読み直す。

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Boz Scaggs - JoJo (Official Video)
目次

1980年のトップ20は4曲、アルバムに入ったのは2曲

『Silk Degrees』(1976) が Billboard 200 で2位、『Down Two Then Left』(1977) が11位、『Middle Man』が8位。アルバムは前作を上回り、1981年に RIAA プラチナ認定を受けた。しかしシングルの動きは、アルバムの枠に収まらない。

曲収録元Hot 100Adult Contemporaryカナダ (RPM)
Breakdown Dead Ahead『Middle Man』15位—8位
Jojo『Middle Man』17位29位15位
Look What You’ve Done to Me映画『Urban Cowboy』サントラ14位3位30位
Miss Sunベスト盤『Hits!』14位(1981年2月)13位33位

アルバム収録の2曲より、アルバム外の2曲のほうが Hot 100 の順位は上だった。1980年の Boz Scaggs のラジオでの存在感は、『Middle Man』1枚では説明しきれない。

一晩で書かれた曲が、アルバムの曲を上回った

「Look What You’ve Done to Me」の成り立ちは、『Middle Man』の制作とは対照的だ。映画会社から「明日撮影するシーンのために曲がほしい」と連絡が入り、Boz と David Foster は一晩で曲を書き、録音し、翌朝の便でテープを送った。Foster が弾いたイントロのコードに Boz が「それだ」と応じたのは夜も終わるころだった、と Foster は後年語っている。

バックは Steve Lukather、Jeff Porcaro、Mike Porcaro に加え、Eagles の Glenn Frey、Don Henley、Timothy B. Schmit がコーラス。プロデュースは Foster と Bill Schnee の連名。『Middle Man』と同じ制作チームが、アルバムの外で、アルバムの曲より高い順位を取ったことになる。

もう1曲の「Miss Sun」はさらに遡る。David Paich が書いたこの曲は、1977年に Paich、Hungate、Lukather、Jeff Porcaro、Steve Porcaro がデモとして録音したもので、そのデモが Columbia との契約、すなわち Toto 結成につながった。Boz は1980年、Schnee のプロデュースで同じメンバーと再録音し、ベスト盤『Hits!』の唯一の新曲として収めた。

Toto を3枚続けて使うということ

『Middle Man』のリズム・セクションは、『Silk Degrees』『Down Two Then Left』に続いて3作連続で Toto のメンバーが中心になっている。Jeff Porcaro が9曲中6曲でドラムを叩き、David Hungate がベース、Steve Lukather がリード・ギター、David Paich が「Simone」「Do Like You Do in New York」で鍵盤を担当した。

ただし『Silk Degrees』の頃と違い、彼らはもう「Boz のバンド」ではなく、1978年のデビュー作と1979年10月の『Hydra』を出した現役のバンドだった。『Silk Degrees』では無名のセッションマンだった4人が、ここでは名前のあるゲストとして戻ってきた。

だから本作の鍵盤の主役は Paich ではなく David Foster である。Foster は9曲中7曲を Boz と共作し、シンセ、ピアノ、ストリングス・アレンジのほとんどを担った。Toto の上に Foster の書法が乗る配置は『Toto IV』(1982) より2年早く、ここで一度試されている。

Bill Schnee——エンジニアがプロデューサーになり、曲も書いた

『Silk Degrees』『Down Two Then Left』のプロデューサーは Joe Wissert だった。『Middle Man』で Boz はそれを Bill Schnee に替えた。Schnee はもともとエンジニアで、本作でもプロデュースと録音を1人で受け持っている。録音とミックスは Los Angeles の Studio 55 を主に、Sunset Sound と Cherokee Studios を併用した。

Schnee の関与は卓の前だけに留まらなかった。アルバム最後の「You Got Some Imagination」は Lukather、Scaggs、Schnee の3人の共作で、この曲だけギターは全パートを Lukather が弾いている。

項目内容
リリース1980年4月 / Columbia Records
録音1979年 / Studio 55(Los Angeles)、Sunset Sound、Cherokee Studios
プロデュース・エンジニアBill Schnee
アシスタント・エンジニアStephen Marcussen, Gabe Veltri
マスタリングDoug Sax, Mike Reese(The Mastering Lab)
主な参加David Foster (key) / Steve Lukather (g) / Ray Parker Jr. (g) / David Hungate (b) / Jeff Porcaro, Rick Marotta, Joe Vitale (ds) / Carlos Santana (g solo: You Can Have Me Anytime)
アートワーク写真 Guy Bourdin / デザイン Nancy Donald
Billboard 2008位(1980年 年間37位)/ RIAA プラチナ(1981年)

アルバムに残った2曲——「Breakdown Dead Ahead」と「Jojo」

Breakdown Dead Ahead(4:33)

1980年3月に先行シングルとして出た本作の入口。ドラムは Jeff Porcaro ではなく Rick Marotta で、Don Grolnick のエレクトリック・ピアノと Foster のアコースティック・ピアノが左右に分かれる。Ray Parker Jr. のリズム・ギターの上で Lukather がソロを取る配置は、このアルバムのほぼ全曲で繰り返される基本形だ。Hot 100 で15位、Cash Box では12位、カナダでは8位まで上がった。

Jojo(5:51)

6月発売の2枚目のシングルで、Foster と Boz に加えて David Lasley が作曲に名を連ねる。アルバム版は5分51秒、シングルは4分09秒に短縮された。サックス・ソロは Adrian Tapia。Hot 100 17位のほか、Hot Soul Singles でも17位に入り、R&B の聴衆にも届いた。

2曲とも Foster との共作で、2曲ともカナダでは米国より上の順位を記録している。Boz のロック寄りの側面は、本国より隣国で受け入れられた。

Santana のソロと、Boz が1人で書いた2曲

「You Can Have Me Anytime」は本作で唯一のゲスト・ソロ曲で、Carlos Santana がギター・ソロを弾いている。San Francisco を拠点にした2人の接点がここで形になった。Foster との共作のバラードで、後に『Hits!』にも収録された。

一方、Foster の手が入っていない曲が2曲ある。「Do Like You Do in New York」と「Isn’t It Time」はどちらも Boz の単独作だ。前者は Joe Vitale のドラム、Ray Parker Jr. のベース、James Newton Howard のクラヴィネットに Bill Champlin のコーラスという、他の曲と違う編成で録られた。後者は Rick Marotta のドラムに Grolnick のピアノ。Foster の書法とは別の Boz 自身の筆致が残った場所として聴くと、このアルバムが「Foster のアルバム」ではないことが分かる。

Guy Bourdin のスリーブ——「先にジャケットを作った」という批評

ジャケット写真は、フランスのファッション写真家 Guy Bourdin が撮っている。Bourdin は『Down Two Then Left』のジャケットも手がけている。

発売当時、Smash Hits の David Hepworth はこのアルバムを「非の打ちどころのない趣味の良さで作られた洗練された white soul」と評しつつ、「先にスリーブをデザインしてから、それに合うレコードを作ったように聞こえる」と書いた。評点は10点中5点。批判ではあるが、Bourdin の写真がアルバムの印象を先に決めてしまうほど強かった、という証言でもある。AllMusic の Cub Koda は後年、70年代のヒットの方程式と80年代の光沢のあるプロダクションの両方に目配せした作品と評した。

なぜ「Middle Man」なのか——8年の空白の手前で

『Middle Man』の後、Boz は1980年11月にベスト盤『Hits!』を出し、それが RIAA プラチナに達した。次のスタジオ盤『Other Roads』は1988年まで出ていない。この8年の間、彼のカタログを支えたのは1976年と1980年の曲を集めたこの1枚だった。

1980年の Boz Scaggs は、最も高い打率を記録した年に、アルバム・アーティストとしての一区切りを迎えていた。4曲のヒットのうち2曲は『Middle Man』に、1曲は映画に、1曲はベスト盤に散らばり、どれも同じ Foster と Toto と Schnee のチームで作られている。作品の単位で見ると散らばっているが、人の単位で見ると一つの仕事だ。

『Silk Degrees』と8年の沈黙のあいだに立つアルバム。「Middle Man」というタイトルは、意図したかどうかとは別に、結果としてこの位置を言い当てている。

参考資料

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この記事を書いた人

AORBreeze運営者。Boz Scaggs、Steely Dan、TOTO、Bobby Caldwellを原体験に、70〜80年代のAOR・ヨットロック・シティポップ・フュージョンを聴き続けているリスナー。David FosterやJay Graydonら西海岸セッション人脈に注目し、参加ミュージシャン視点でアルバムを掘り下げています。

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