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Nicolette – Nicolette Larson 完全レビュー|Lotta Love が結ぶ Neil Young 人脈と西海岸AOR(1978)

Nicolette Larson レビュー
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1978年11月、Nicolette Larson はデビュー・アルバム『Nicolette』を Warner Bros. からリリースした。Linda Ronstadt のバック・ヴォーカリストとして頭角を現し、Neil Young との交友(彼の自宅録音作の常連参加者)を持つ彼女が、Doobie Brothers の Ted Templeman をプロデューサーに迎えて作り上げた本作は、Billboard 200 で15位、ゴールド認定。先行シングル “Lotta Love”(Neil Young 作)は Billboard Hot 100 で8位の大ヒット、Adult Contemporary で1位。Neil Young 人脈と西海岸AOR セッション陣の交点に立つ、女性 SSW の AOR の決定盤として現在も愛され続けている。

Nicolette Larson - Lotta Love (Official Music Video)
目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • Lotta Love — Neil Young 作の隠れ名曲。彼が録音したものの本人ヴァージョンは発表されず、Nicolette のヴァージョンが決定版となった
  • Doobie Brothers の Ted Templeman プロデュース。Michael McDonald、Patrick Simmons らがコーラスで参加
  • Linda Ronstadt 系列の “西海岸女性SSW” 路線と、AOR のセッション体制の融合。Karla Bonoff、Linda Ronstadt と並ぶ重要作

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背景:Neil Young との交友からソロ転向

Nicolette Larson は1952年モンタナ州ヘレナ生まれ、後にミズーリ州カンザスシティで育つ。1970年代前半に San Francisco に移り住み、サンフランシスコのフォーク/カントリー・ロック・シーンで活動。1975年に Hoyt Axton のツアー・バンドに参加し、その後 Commander Cody and His Lost Planet Airmen に加入。1977年、Linda Ronstadt の『Simple Dreams』(1977) のセッションでバック・ヴォーカルを担当し、それをきっかけに Ronstadt の友人だった Neil Young と知り合った。

1977年〜1978年、Nicolette は Young の自宅(Broken Arrow Ranch)での録音セッションに頻繁に参加。Neil Young の『American Stars ‘n Bars』(1977)、『Comes a Time』(1978) では、Linda Ronstadt と並ぶバック・ヴォーカル陣として明記される。Young との関係は音楽的な信頼関係の典型例で、彼は Nicolette のために “Lotta Love” を提供した(自身は録音しながら発表しないことを決めた)。

1978年、Nicolette は Warner Bros. と契約。プロデューサーには Doobie Brothers の Ted Templeman を起用した。Templeman は Doobie Brothers の Michael McDonald 時代の制作で AOR の音響を確立していた人物で、Nicolette の “Linda Ronstadt 系列の声” と、Doobie 後期の “白いソウル” の音響を融合させる方向性を持って本作の制作に臨んだ。

録音は1978年中盤、Sunset Sound と Warner Brothers Studio(ロサンゼルス)で。Doobie Brothers 全員(McDonald, Simmons, Baxter)が参加するほか、Linda Ronstadt、Andrew Gold、Albert Lee などの友人陣もコーラスで参加した、極めて豪華なセッションとなった。

全曲レビュー

1. Lotta Love(3:09)★ ティアA

本作の——そして Nicolette Larson のキャリア全体の——もっとも有名な楽曲。Neil Young 作。Billboard Hot 100 で8位、Adult Contemporary で1位、Country チャートでも好成績。グラミー賞 Best Pop Vocal Performance Female にノミネート。

Ted Templeman のプロダクションは、Neil Young の自宅録音的なフォーキーな質感を残しながら、Doobie Brothers の “白いソウル” のグルーヴを加えるという絶妙なバランス。Michael McDonald がコーラスで参加し、サビでの2人の声の重なりは AOR / カントリー・ソウルの境界線を完璧に超える。”It’s gonna take a lotta love…” のフックは、80年代の西海岸AOR の代表的なメロディの一つ。

2. Rhumba Girl(3:55)

Jesse Winchester 作のカリブ風ナンバー。本作のなかでもっとも軽快な楽曲。シングル・カットされ、Adult Contemporary で17位。

3. Give a Little(3:48)

Andrew Gold 作のミドル・テンポ。Gold 自身がギターで参加。本作のなかで最もポップ寄りの楽曲。

4. Mexican Divorce(3:30)

Burt Bacharach / Bob Hilliard 作の60年代ポップ・スタンダードのカバー。本作のなかで Nicolette のヴォーカル表現の幅を最も明確に示す1曲。

5. Baby, Don’t You Do It(3:25)

Holland-Dozier-Holland 作の Marvin Gaye のオリジナル曲のカバー。本作のなかで最もソウル寄りの楽曲。

6. You Send Me(3:35)

Sam Cooke の代表曲(1957年)のカバー。シングル・カット(Adult Contemporary で40位)。Nicolette のヴォーカルが、Sam Cooke へのリスペクトを完璧に表現する。

7. Can’t Get Away from You(3:55)

Tom Snow 作のミドル・テンポ。Snow はその後の AOR / シティポップ系のソングライティングで頭角を現す人物。

8. French Waltz(3:32)

Adam Mitchell 作のワルツ。本作のなかで最も実験的な楽曲で、アコーディオン風のシンセが効いている。

9. Last in Love(3:30)

Glenn Frey / Jack Tempchin の共作。Eagles 人脈との関係が見える1曲。後年 Eagles / Glenn Frey 自身もカバー。

10. Come Early Mornin’(3:35)

Don Williams 作のカントリー・ナンバー。Nicolette のカントリー・ルーツが垣間見える。

11. Angels Rejoiced(3:24)

クロージング。トラディショナル・ゴスペル風のアコースティック・ナンバーで、Nicolette のヴォーカルが極めて親密に響く。アルバム全体を静かに閉じる絶妙な配置。

参加メンバー(豪華絢爛)

  • Vocals: Nicolette Larson
  • Backing Vocals: Michael McDonald, Patrick Simmons, Linda Ronstadt, Andrew Gold, Albert Lee, Herb Pedersen
  • Guitar: Jeff “Skunk” Baxter, Albert Lee, Andrew Gold, Waddy Wachtel
  • Bass: Klaus Voorman, Bob Glaub
  • Drums: Rick Marotta, Mike Botts
  • Keyboards: Bill Payne(Little Feat), Craig Doerge
  • Pedal Steel: Sneaky Pete Kleinow
  • Producer: Ted Templeman

このクレジット・リストは、70年代後半の西海岸ロック / AOR のオールスター・ロステーション。Doobie Brothers の Michael McDonald、Linda Ronstadt、Albert Lee(イングランド出身のギターの達人)、Andrew Gold(自身も AOR の主要作家)、Waddy Wachtel(Linda Ronstadt のセッション・ギタリスト)、Bill Payne(Little Feat)——すべてが Nicolette のために集結した。これは Nicolette が当時の西海岸ロック界でいかに愛されていたかを示す事実である。

“西海岸女性 SSW” の系譜

本作は、70年代後半に勃興した “西海岸女性 SSW” 系列(Linda Ronstadt、Karla Bonoff、Wendy Waldman、Maria Muldaur、Janis Ian など)の代表作のひとつ。Nicolette のヴォーカルは、Linda Ronstadt の力強さと、Karla Bonoff の繊細さの中間に位置する独特の質感を持っており、AOR / カントリー・ロックの両方に橋を架ける役割を果たした。

Nicolette は本作の後、1981年の『Radioland』(Ted Templeman プロデュース、AOR 寄り)、1985年の『Say When』(Country 寄り) などをリリースしながら、徐々にカントリーの方向へと音楽性を移していった。1990年代以降はテネシー州ナッシュビルに拠点を移し、カントリー・ミュージックの世界で活動。1997年12月、44歳という若さで脳浮腫により逝去した。

このアルバムの位置付け

  • 1977〜1978: Neil Young の自宅セッション参加期
  • 1978: Nicolette(本作、デビュー作)
  • 1980: In the Nick of Time
  • 1981: Radioland
  • 1985: Say When(カントリー寄り)

私的な感想——Lotta Love の “そばに居る声”

Nicolette Larson のヴォーカルは、技術的に最高峰でも音域的に派手でもない。だが、彼女の声には独特の “そばに居る” 感覚がある。録音の前で歌う彼女が、聴き手のすぐ隣で耳元で囁いているような近さ。Ted Templeman のプロダクションは、その近さを最大限に活かしている。”Lotta Love” の Michael McDonald とのコーラスでの掛け合いは、AOR / 西海岸ロックの “親密さ” の最高峰のひとつ。

AOR を語るとき、Linda Ronstadt と Karla Bonoff の名前は必ず出るが、Nicolette Larson は時として忘れられがちである。だが、本作の “Lotta Love” を聴けば、彼女が70年代後半の西海岸 AOR で果たした役割の大きさが理解できる。彼女の44歳という早い逝去は AOR コミュニティの大きな損失だったが、本作で残した足跡は永遠である。

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