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Hi Infidelity – REO Speedwagon 完全レビュー|全米1位9週連続を達成したパワーバラードの大本命(1980)

Hi Infidelity - REO Speedwagon レビュー
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1980年11月、REO Speedwagon は通算9枚目のスタジオ・アルバム『Hi Infidelity』を Epic Records からリリースした。Illinois 州 Champaign 発祥のこのバンドは、1971年のデビュー以降8年間、コアな中西部ファン層に支えられて活動を続けてきたが、商業的なブレイクには至っていなかった。だが本作で爆発的成功を収め、Billboard 200 で15週連続1位、最終的に米国だけで1000万枚(ダイヤモンド認定)を売り上げた。”Keep On Loving You” は彼ら初の全米1位シングルとなり、”Take It on the Run” “Don’t Let Him Go” “In Your Letter” も次々とヒット。アリーナAORの代表作として、現在も80年代ロック愛好家から愛され続けている。

REO Speedwagon - Keep On Loving You (Official Video)
目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • Keep On Loving You — REO Speedwagon 初の全米1位。パワーバラードAOR の代表的1曲
  • Kevin Cronin のソングライティング。シンプルな構造に “切実さ” を込めた歌詞は、80年代AOR の感情表現の典型
  • Take It on the Run のアコースティック・ギターの音響。アリーナロックの中に “親密さ” を持ち込んだ稀有な作例

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背景:8年の下積みからの大ブレイク

REO Speedwagon は1967年、Illinois 大学のドラマー Neal Doughty を中心に Illinois 州 Champaign で結成された。バンド名は1915年製の REO Motor Car Company の “Speed Wagon” トラックに由来する。1971年のデビュー作以降、メンバーチェンジを繰り返しながらも、中西部のクラブ・ツアー・サーキットを精力的に巡り、コアなファン層を構築していった。1975年に Kevin Cronin がリード・ヴォーカリスト&主要ソングライターとして加入してから、バンドの音楽性は急速にAOR寄りに変化していった。

1978年の『You Can Tune a Piano, but You Can’t Tuna Fish』が初のプラチナ認定を獲得し、1980年に本作の制作に取り掛かった。Kevin Cronin は当時、私生活で大きな転機(離婚など)を迎えていた時期で、その個人的な感情の混乱が本作の歌詞の中心テーマ(”高い不貞 = Hi Infidelity”)となった。

プロデュースは Kevin Cronin、Gary Richrath(ギター)、Kevin Beamish の共同プロデュース。録音は1980年中盤、ロサンゼルスの Kendun Recorders で。バンドのメンバーがプロデュースに深く関与する制作スタイルは、AOR / アリーナロックの自主独立的な気風を体現している。

全曲レビュー(Side A → Side B)

Side A

1. Don’t Let Him Go(3:50)★

シングル・カット(Billboard Hot 100 で24位)。Kevin Cronin のソングライティングの “切実さ” が前面に出るオープナー。Cronin のヴォーカル史上もっとも力強い歌唱のひとつ。

2. Keep On Loving You(3:21)★ ティアA

本作の——そして REO Speedwagon のキャリア全体の——もっとも有名な楽曲。Billboard Hot 100 で1位(彼らにとって初の1位)、Adult Contemporary で6位、Mainstream Rock 1位。Kevin Cronin の作曲。

冒頭の Cronin の囁くようなヴォーカル “You should’ve seen by the look in my eyes, baby…” から始まり、サビ “And I’m gonna keep on loving you” のシャウトでクライマックスに達する。Gary Richrath のギター・ソロも、アリーナロックの “メロディの強度” を完璧に示す名演。パワーバラードAOR の代表的楽曲として、現在も世界中で愛され続けている。

3. Follow My Heart(4:00)

軽快なミドル・テンポ。本作のなかで最も “ポップ寄り” の楽曲。

4. In Your Letter(3:30)★

シングル・カット(Billboard Hot 100 で20位)。Gary Richrath の作曲&リード・ヴォーカル。1950年代の Buddy Holly / Everly Brothers 風のメロディが、80年代のアリーナロックの音響に乗ったレトロモダンな楽曲。

5. Take It on the Run(4:00)★ ティアA

シングル・カット(Billboard Hot 100 で5位)。Gary Richrath の作曲、Kevin Cronin のヴォーカル。冒頭のアコースティック・ギターのアルペジオが、アリーナロック・アルバムのなかでこれほど親密な響きを持つ瞬間は稀有である。”Heard it from a friend who, heard it from a friend who, heard it from another…” の語呂のよい歌詞は、80年代のラジオ・ヒットの典型例。

Side B

6. Tough Guys(4:00)

本作のなかで最もハードロック寄りの楽曲。Gary Richrath のリフが終始リードする。

7. Out of Season(3:25)

本作のなかでもっとも内省的な楽曲。Cronin のヴォーカルが極めて抑制される。

8. Shakin’ It Loose(2:35)

本作中もっとも短く、もっともストレートなロック・ナンバー。

9. Someone Tonight(3:30)

軽快なシャッフル。本作の “中堅楽曲” として、シングル候補にもなった。

10. I Wish You Were There(4:15)

クロージング。Cronin の作曲&ヴォーカルで、別れた恋人への想いを歌う、本作のテーマを締めくくるバラード。”高い不貞 = Hi Infidelity” というアルバム・タイトルの “もう一つの側面”——別れの後の喪失感——を、最後に提示する絶妙な配置。

参加メンバー(REO Speedwagon 5人組)

  • Lead Vocals: Kevin Cronin
  • Guitar/Backing Vocals: Gary Richrath
  • Keyboards: Neal Doughty
  • Bass: Bruce Hall
  • Drums: Alan Gratzer
  • Producer: Kevin Cronin, Gary Richrath, Kevin Beamish

このラインナップは、1977年〜1989年まで続く REO Speedwagon の “黄金期5人組”。Cronin と Richrath のソングライティング・コンビが、本作の楽曲群を完璧にまとめ上げた。

15週連続1位の意味

本作の Billboard 200 で15週連続1位という記録は、1980年代初頭のロック・アルバムとしては最高水準の数字。同時期に競合していた Pat Benatar『Crimes of Passion』、Foreigner『4』(1981 リリース)、Journey『Captured』などを抑えての記録達成は、Kevin Cronin の “個人的な歌詞” が時代の感情に完璧に合致したことを示す。

“高い不貞” というシニカルなタイトルは、1980年初頭のアメリカ社会の “別れと再構築” のテーマを反映している。離婚率の急上昇、エイズ危機の前夜、ニュー・キャピタリズム時代の親密関係の脆弱性——本作はそれらすべてを、3分台のポップ・ロックの語彙で歌い上げる。

このアルバムの位置付け

  • 1978: You Can Tune a Piano, but You Can’t Tuna Fish(初のプラチナ)
  • 1979: Nine Lives
  • 1980: Hi Infidelity(本作、頂点)
  • 1982: Good Trouble
  • 1984: Wheels Are Turnin’(”Can’t Fight This Feeling”)

私的な感想——Keep On Loving You の切実さ

“Keep On Loving You” の Kevin Cronin の歌唱には、技術的な派手さも声域の広さもない。代わりに、彼が当時実生活で経験していた大きな変化の “切実さ” がそのまま乗っている。ロック・ヴォーカリストが個人的な感情をこれほど赤裸々に歌に込めた事例は、AOR / アリーナロックの領域では稀である。

本作は、80年代AOR / アリーナロックの “感情の劇場性” の典型例である。Foreigner『4』の Lou Gramm の “I never felt this way before” と並んで、REO Speedwagon の Kevin Cronin の “I’m gonna keep on loving you” は、80年代の若者世代のロマンスの BGM として、今も愛され続けている。AOR を語るうえで本作は決して見落としてはならない決定盤である。

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