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Breakin’ Away – Al Jarreau 完全レビュー|Jay Graydon が定義したジャズボーカルAORの傑作(1981)

Breakin Away - Al Jarreau レビュー
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1981年4月、Al Jarreau は通算5枚目のスタジオ・アルバム『Breakin’ Away』を Warner Bros. からリリースした。プロデュースは Jay Graydon——Steely Dan “Peg” のソロでグラミー賞を獲った、80年代AOR の中核プロデューサー/ギタリスト。本作は Billboard 200 で9位、ジャズ・チャート1位、最終的にプラチナ認定。グラミー賞 Best Male Pop Vocal Performance と Best Male Jazz Vocal Performance を同年に獲得した史上初のアーティストとなり、ジャズ・ボーカリストの新しい道を切り拓いた。”We’re in This Love Together” “Roof Garden” “Breakin’ Away” 3つのシングル・ヒットを擁し、AOR と現代ジャズ・ボーカルの完璧な融合作として、現在も愛好家から熱烈に支持されている。

Al Jarreau - We're In This Love Together (Official Video)
目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • Al Jarreau の声を Jay Graydon の AOR 音響パッケージに乗せた、ジャンル横断の最高傑作
  • “We’re in This Love Together” — Billboard 15位の AOR バラード・ヒット。Jarreau のヴォーカル史の頂点
  • David Foster、Steve Lukather、Jeff Porcaro ら “Airplay” 人脈が結集、80年代AOR セッション体制の完成形

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背景:Al Jarreau と Jay Graydon の出会い

Al Jarreau は1940年ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ。社会福祉学の修士号を持つ異色の経歴を持ちながら、30代でジャズ・ボーカリストとして本格的にデビュー。1975年の Warner Bros. 契約後、『We Got By』(1975)、『Glow』(1976)、『All Fly Home』(1978)、『This Time』(1980) と着実にキャリアを築き、特に米国ジャズ・チャートとヨーロッパで高い評価を得ていた。

1980年、Warner Bros. は Jarreau の音楽をさらにクロスオーバー(ジャズ+ポップ)に押し進める方針を立て、プロデューサーに Jay Graydon を起用した。Graydon はこの時点で、Manhattan Transfer『Extensions』(1979)、Cheryl Lynn『In the Night』(1981) などの実績があり、Airplay(自身のユニット)でも音楽的な方向性を確立していた。Graydon と Jarreau の組み合わせは、AOR と現代ジャズ・ボーカルの “最良の組み合わせ” として、瞬く間に名コンビとして認識された。

本作の録音は1981年初頭、ロサンゼルスの Davlen Sound(Silk Degrees, Airplay と同じスタジオ)で。参加メンバーには David Foster、Steve Lukather、Jeff Porcaro、Abraham Laboriel、Larry Williams、Jerry Hey ら “Airplay 人脈” がほぼそのまま結集。AOR セッション体制の完成形をここで再現した。

全曲レビュー

1. Easy(4:18)

軽快なシャッフルで本作を開ける。Steve Lukather のギターと David Foster の Rhodes が、Jarreau のヴォーカルの “リラックス” を支える。AOR の “easy listening” 系統の典型例。

2. Roof Garden(4:42)★

シングル・カット(Billboard Hot 100 で78位、Adult Contemporary で38位)。屋上庭園での恋を歌う、本作のなかでもっともラテン色の強い曲。Jay Graydon のギター・ソロが、ブラジル音楽の影響を強く感じさせる。Jerry Hey のホーン・アレンジが、楽曲を一気にスケールアップさせる。

3. We’re in This Love Together(3:51)★ ティアA

本作最大のシングル・ヒット(Billboard Hot 100 で15位、Adult Contemporary で6位)。Roger Murrah/Keith Stegall の作曲。Jarreau の歌唱が、AOR バラードの語彙を完全に体現する瞬間——抑制された始まり、徐々に高まる感情、サビでの解放、そしてサビ後の囁き。これほど “歌唱の物語性” を完璧に構築した AOR バラードは他にあまり例がない。

結婚式やバレンタインデーの定番として、本曲は40年にわたって愛され続けている。Jarreau の “上品なソウル” の代表作。

4. Breakin’ Away(4:12)★

タイトル曲。シングル・カット(Billboard Hot 100 で43位)。”Breakin’ away from what holds you down” のリフレインは、80年代の新しい “自己実現” のテーマを音楽化した。Jay Graydon の Steely Dan 的な複雑なコード進行と、Jarreau のスキャット技術が組み合わさった、本作のもう一つの代表曲。

5. Our Love(4:24)

本作中もっとも繊細なバラード。Jarreau の歌唱表現の幅を示す重要な1曲。Foster のピアノが、最小限の伴奏で楽曲を支える。

6. Teach Me Tonight(4:55)

1953年の Sammy Cahn/Gene De Paul 作のスタンダードを、Jarreau がモダンなアレンジでカバー。彼のジャズ・ボーカリストとしての本領が発揮される、本作中最もジャジーな曲。

7. Don’t It Make You Wanna Dance?(4:11)

ファンキーなナンバー。Jeff Porcaro のグルーヴィなドラム、Steve Lukather のリフが効いた、本作のもう一つの “踊れる” 曲。

8. Closer to Your Love(4:45)

本作のなかでもっとも長尺なバラード。Jarreau の歌唱が、ジャズの即興とポップのメロディの間を行き来する、貴重な1曲。

9. (Round, Round, Round) Blue Rondo À la Turk(4:14)

クロージング。Dave Brubeck のジャズ・スタンダード “Blue Rondo À la Turk” に Jarreau が歌詞を付けたバージョン。9/8拍子の複雑なリズムを、ヴォーカルでスムーズに歌い切る Jarreau の超絶技巧が炸裂する。本作の “ジャズ・ボーカリスト” としての本領を最後に示す、絶妙な配置。

参加メンバー(Airplay 人脈勢ぞろい)

  • Vocals: Al Jarreau
  • Guitar/Producer: Jay Graydon
  • Keyboards: David Foster, Greg Mathieson
  • Bass: Abraham Laboriel, Neil Stubenhaus
  • Drums: Jeff Porcaro, Carlos Vega
  • Guitar: Steve Lukather(”Roof Garden”)
  • Sax: Larry Williams, Ernie Watts
  • Brass: Jerry Hey, Gary Grant(Phenix Horns)
  • Backing Vocals: Bill Champlin, Tom Kelly, Richard Page

この参加メンバー・リストは、Airplay(David Foster/Jay Graydon/Tommy Funderburk のユニット)とほぼ完全に重なっている。AOR セッション体制の “拡張版” として、本作の音響は構築されていた。

グラミー史を塗り替えた1982年

1982年2月のグラミー賞授賞式で、Al Jarreau は史上初めて、Best Male Pop Vocal Performance(”Breakin’ Away”)と Best Male Jazz Vocal Performance(”Blue Rondo À la Turk”)を同年に獲得した。これは、ジャンルを跨いで両部門を制覇した唯一のヴォーカリストの記録であり、本作の “ジャンル横断” 性を最も鮮明に示す事実である。

Jay Graydon もこの時期、Manhattan Transfer『Mecca for Moderns』のプロデュースで Best Arrangement for Voices を獲得しており、彼の AOR セッション体制が “ジャズ寄りの AOR” を完全に支配していたことを物語る。

このアルバムの位置付け

  • 1978: All Fly Home(ジャズ・ボーカリストとしての確立)
  • 1980: This Time(クロスオーバーへの萌芽)
  • 1981: Breakin’ Away(本作、完成形)
  • 1983: Jarreau(”Mornin'” 収録)
  • 1986: L Is for Lover(Nile Rodgers プロデュース)

私的な感想——”We’re in This Love Together” の “上品さ”

Al Jarreau のヴォーカルは、技術的にどう説明したらいいか難しい。彼のスキャット、彼の音域の広さ、彼のフレージングの上品さ——どれもがジャズ・ボーカルの伝統に根ざしながら、AOR / ポップの語彙でも完璧に機能する。”We’re in This Love Together” の歌唱は、僕にとって “大人のラブソング” の最高峰である。

Bobby Caldwell が “白いソウル” の代表だとすれば、Al Jarreau は “黒いジャズ+AOR” の代表である。両者は鏡像のように対をなしていて、AOR の両端を支えている。本作はその “もう一方の端” を完璧に示す、AOR / ジャズボーカル必修の1枚である。

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