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All ‘n All – Earth, Wind & Fire 完全レビュー|Fantasy を擁するソウル/ファンクの至高(1977)

All N All - Earth Wind and Fire レビュー
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1977年11月、Earth, Wind & Fire は通算8枚目のスタジオ・アルバム『All ‘n All』を Columbia Records からリリースした。前作『Spirit』(1976) で全米2位、4倍プラチナを獲得した彼らが、Maurice White のリーダーシップのもと、ジャズ・ソウル・ファンク・ラテン・アフリカン・ポップを完全に融合させた本作は、Billboard 200 で3位、トリプル・プラチナを記録。”Fantasy” “Serpentine Fire” “Got to Get You Into My Life” の3つのシングルがチャートを賑わせ、グラミー賞 Best R&B Vocal Performance by a Group も獲得した。EW&F 黄金期の頂点に立つ作品として、AOR / メロウ系統の重要な隣接ジャンルである “ブラック・コンテンポラリー” の方法論を完成させた1枚。

Earth, Wind & Fire - Fantasy (Official Live Performance)
目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • “Fantasy” — AOR / メロウソウル史上もっとも有名なバラードのひとつ。Philip Bailey のファルセットが定義した80年代以降の “ソウル・ファルセット” 語彙の原型
  • “Serpentine Fire” のホーン・アレンジ、David Foster のキーボード参加——AOR の音響設計に直接繋がる人脈の交差点
  • Maurice White の “ジャンル横断のヴィジョン”。ファンク・ジャズ・ソウル・アフリカン・ヨガ思想の全融合

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背景:Maurice White の “全融合” ヴィジョン

Earth, Wind & Fire は、ドラマー/ヴォーカリスト Maurice White が1969年にシカゴで結成した黒人音楽グループ。1973年の Columbia 移籍と『Head to the Sky』以降、急速に商業的成功を収め、1975年の『That’s the Way of the World』、1976年の『Spirit』で全米トップ・ソウル・ファンク・グループの地位を確立した。

本作の制作期は1977年初頭。Maurice White は1976年にブラジルへ旅行、ボサノヴァやサンバの音響に強い影響を受けた。これに、彼が長年学んできたヨガ・古代エジプト思想・アフリカン宗教観の要素を加え、”音楽の総合芸術” としての作品を構想した。アルバム・ジャケットには、エジプトの神々と古代宇宙論をモチーフにした、Shusei Nagaoka(長岡秀星)のイラストが採用された。

プロデュースは Maurice White と Charles Stepney(彼は本作の制作中に逝去)。アレンジには Tom Tom 84、Eumir Deodato、そして当時の若手 David Foster が参加。録音はロサンゼルスの Hollywood Sound Recorders と、サンフランシスコの Wally Heider Studios で。録音は1977年春から秋にかけて、長期間をかけて磨き上げられた。

主要曲レビュー

1. Serpentine Fire(3:50)★ ティアA

シングル・カット(Billboard Hot 100 で13位、R&B チャート1位)。Maurice White/Verdine White/Sonny Burke の共作。冒頭の力強いベース・ライン(Verdine White)と、Andrew Woolfolk のサックス・リフが、Philip Bailey のファルセット・ヴォーカルを呼び込む。”You will find peace of mind / If you look way down in your heart and soul” のリフレインは、ソウル・ファンクの説教的テーマと、AOR の “個人的内省” の交点に立つ。

2. Fantasy(4:38)★ ティアA

本作の——そして EW&F のキャリア全体の——もっとも代表的なバラード。Maurice White/Eduardo del Barrio/Verdine White の共作で、ブラジルの作曲家 Eduardo del Barrio が共作者として名を連ねていることに注目。コード進行はブラジル音楽(ボサノヴァ)の語彙そのもので、本作の “ジャンル横断” の象徴的1曲。

Philip Bailey のファルセット・ヴォーカルは、本作で初めて完全な形に達した。”Every man has a place / In his heart there’s a space…” と続く歌唱は、AOR / メロウ系統の “黒いボーカル” の最高峰として、Stevie Wonder “Isn’t She Lovely” と並ぶポップ史上の到達点。

3. In the Marketplace(0:48)

短いインタールード。エジプト風のシンセサイザーとパーカッションで、アルバムの “宗教的” 雰囲気を強調する。

4. Jupiter(3:11)

ファンク・ナンバー。Maurice White と Philip Bailey のデュエットが、惑星と古代神話を語る。

5. Love’s Holiday(4:25)

Skip Scarborough 作のバラード。Philip Bailey のソロ・ヴォーカルが、Quincy Jones 風のオーケストレーションの上を漂う。AOR バラードの隠れた名曲。

6. Brazilian Rhyme(Interlude)(1:22)

ブラジル風のリズムを使った短いインタールード。Tower of Power Horns 風のホーン・アレンジが効いている。

7. I’ll Write a Song for You(5:24)

本作のなかでもっとも繊細なバラード。Philip Bailey の歌唱表現の幅を示す重要な1曲。

8. Magic Mind(3:55)

軽快なファンク。Eduardo del Barrio のキーボードが、再びブラジル音楽の影響を見せる。

9. Runnin’(5:53)

インストゥルメンタル。EW&F のジャズ的側面が前面に出る、本作中もっとも実験的な楽曲。

10. Be Ever Wonderful(5:08)

クロージング。Maurice White のリード・ヴォーカルで、本作のテーマである “宇宙への愛” を歌い上げる。アルバムを荘厳に閉じる、ソウル・ゴスペル風のバラード。

参加メンバー(EW&F 8人組+客演)

  • Lead Vocals: Maurice White, Philip Bailey
  • Bass: Verdine White
  • Drums: Maurice White, Fred White
  • Guitar: Al McKay, Johnny Graham
  • Saxophone: Andrew Woolfolk
  • Keyboards: Larry Dunn, David Foster(”Fantasy” “Love’s Holiday” 他)
  • Percussion: Ralph Johnson
  • Brass Arrangement: Tom Tom 84, Jerry Hey(Phenix Horns)
  • Producer: Maurice White, Charles Stepney(逝去)

David Foster がここで EW&F のキーボード/アレンジに参加していることに注目。Foster は同時期に Boz Scaggs『Down Two Then Left』のアレンジも担当しており、彼自身が AOR / ソウルの “境界線” を実体として体現していた。Phenix Horns(Jerry Hey、Don Myrick らによる EW&F の専属ホーン陣)も、後に Quincy Jones / Michael Jackson 『Off the Wall』に参加することになる、80年代ホーン・アレンジの主軸。

AOR との接点——David Foster と Phenix Horns

本作で重要なのは、David Foster と Phenix Horns(EW&F 専属ホーン陣)が、ここを起点に AOR 制作の中核へと進出していくことである。Foster は本作の翌年から Airplay 結成(1979)、Toto IV(1982)のアレンジ参加、Chicago 17(1984)のプロデュース、Michael Jackson のヒット曲制作などへと活躍の場を広げる。Phenix Horns(Jerry Hey, Gary Grant, Bill Reichenbach Jr., Larry Williams)も同様に、80年代のすべての AOR / ポップス・ホーン・セクションの主軸となった。

つまり Earth, Wind & Fire の音楽制作は、ソウル / ファンクのアルバムを作りながら、同時に AOR 制作集団の “養成所” としても機能していた。本作はその転換点に位置する。

このアルバムの位置付け

  • 1975: That’s the Way of the World(前半の頂点)
  • 1976: Spirit
  • 1977: All ‘n All(本作、後半の頂点)
  • 1979: I Am(”After the Love Has Gone” — David Foster 共作のグラミー受賞曲)
  • 1980: Faces

私的な感想——”Fantasy” のファルセット

“Fantasy” の Philip Bailey のファルセット・ヴォーカルを最初に聴いたとき、僕は人間の声が持つ可能性の限界を、まだ知らないと自覚した。男性のヴォーカルがこれほどの高音域で、これほどの感情を込めて歌えること——それが Bailey の本作以降の “発明” であり、80年代以降のすべての黒人男性ヴォーカリスト(Michael Jackson から D’Angelo まで)に影響を与えた。

AOR を語るとき、EW&F は “外側” のジャンルに見えるかもしれない。だが、David Foster と Phenix Horns がここで AOR の音響設計を学んだ事実を考えると、AOR の “白い湿度” の半分は、EW&F の “黒い宇宙” から来ていることが理解できる。本作はそのことを毎回新しく教えてくれる、AOR 愛好家の必修科目である。

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