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Larry Carlton – Larry Carlton 完全レビュー|”Room 335″ を擁する AOR ギターの教科書(1978)

Larry Carlton レビュー
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1978年9月、Larry Carlton は Warner Bros. から、自身名義のソロ・アルバム『Larry Carlton』をリリースした。Steely Dan『The Royal Scam』『Aja』『Gaucho』、Joni Mitchell『Court and Spark』、Crusaders などで卓越したセッションワークを残してきた Carlton が、自身のリーダー作として自由に作り上げた本作は、AOR ギターの語彙を一つ完成形へと押し上げた決定的な1枚である。”Room 335″ は AOR ギターの教科書として、現在もすべてのギタリストが通る必修科目となっている。Billboard 200 で54位、グラミー賞ノミネート(Best R&B Instrumental Performance)。

目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • “Room 335” — AOR ギター史の最高傑作のひとつ。Steely Dan “Peg” のソロと並んで、Carlton の代表演奏
  • Gibson ES-335 の “歌うトーン” を確立した1枚。後のAORギタリストすべてに影響
  • AOR の “セッションマンの黄金期” を代表する、彼ら自身のリーダー作品の最高峰

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背景:Steely Dan のセッションから個人名義へ

Larry Carlton は1948年、テキサス州ルイビル生まれ。Crusaders(旧称 Jazz Crusaders)に1971年〜1976年まで在籍したのち、独立してロサンゼルスのトップ・セッション・ギタリストとして活動を本格化させた。Steely Dan の Aja の “Peg” でのソロ(Jay Graydon と並んで彼が候補だった伝説のソロ)、Joni Mitchell『Court and Spark』のソロ、Crusaders 時代の “Put It Where You Want It” など、彼のスタジオワークは70年代AORの音響を決定的に形作った。

1978年、彼は Warner Bros. と契約し、自身のホーム・スタジオ(ロサンゼルスの自宅地下)を中心に本作を制作。スタジオの所在地が “Room 335” だったことから、アルバムの目玉曲のタイトルが命名された。プロデュースは Carlton 自身。エンジニアは Don Murray、Larry Forkner。録音は1978年初頭から夏にかけて行われた。

参加メンバーは、Carlton が Steely Dan や Crusaders で長年共演してきた信頼できるセッション陣。Jeff Porcaro(drums)、Greg Mathieson(keyboards)、Abraham Laboriel(bass)、Larry Williams(sax)などが集結し、AOR と R&B の境界線を超えた音響を作り上げた。

全曲レビュー(Side A → Side B)

Side A

1. Room 335(4:50)★ ティアA

本作の——そして AOR ギター史の——最高峰の演奏。Carlton の Gibson ES-335 が “歌うように” メロディを奏でる4分50秒は、現在も世界中のギタリストが必修科目として練習する。Steely Dan “Peg” のソロと並ぶ Carlton の代表作で、AOR のインストゥルメンタル・ナンバーとしては最も有名な1曲。

テーマ・メロディの後、Carlton の2回のソロ、Greg Mathieson の Rhodes ソロ、再び Carlton の終盤ソロ——この5分弱の構成のなかに、AOR の音楽的なすべてが詰まっている。技巧と歌心、ジャズとロック、即興と作曲の境界線を、これほど自然に溶かした演奏は他にあまり例がない。

2. Where Did You Come From(4:34)

Carlton 自身がヴォーカルを取った曲。彼の歌は技巧的に上手いわけではないが、独特のレイドバックした魅力がある。AOR シンガー・ソングライターとしての側面を見せる1曲。

3. Nite Crawler(5:36)

R&B 寄りのファンキーなインスト。Carlton のクリーン・トーンと、Jeff Porcaro のシャッフル・ドラムが組み合わさった、AOR と R&B の融合の典型例。

4. Pure Delight(4:00)

Carlton のクラシック・ギター(アコースティック)が前面に出る、繊細なインストゥルメンタル。本作中もっとも抑制された曲。

Side B

5. (It Was) Only Yesterday(5:21)

Carlton 主唱の AOR バラード寄り曲。Greg Mathieson のシンセ・パッドが、Steely Dan 的な浮遊感を立ち上げる。

6. Dont Give It Up(4:36)

軽快なシャッフル。本作中もっともグルーヴィなトラックで、Larry Williams のサックスも珠玉。

7. Hellos and Goodbyes(5:14)

Carlton のジャズ寄りのコード進行が前面に出るインスト。彼が Crusaders から学んだジャズ・ファンクの語彙が、AOR のフレームのなかで再展開される。

8. I Apologize(4:12)

クロージング。Carlton 主唱の、本作中もっともシンプルなバラード。アルバムを静かに閉じる絶妙な配置。

参加メンバー(LA セッション陣の精鋭)

  • Guitar/Vocals: Larry Carlton
  • Drums: Jeff Porcaro
  • Bass: Abraham Laboriel, Larry Carlton
  • Keyboards: Greg Mathieson
  • Sax: Larry Williams
  • Percussion: Paulinho Da Costa
  • Backing Vocals: Bill Champlin, John Joyce
  • Producer: Larry Carlton / Engineer: Don Murray, Larry Forkner

Jeff Porcaro が本作にも参加していること、Bill Champlin(後の Chicago)がコーラスにいることなど、AOR の “家族関係” がここでも見える。Abraham Laboriel のメロディアスなベース・ラインも、本作のグルーヴの核心を担っている。

Gibson ES-335 と Carlton トーン

Larry Carlton の代名詞は Gibson ES-335——セミ・ホロウ・ボディの伝統的な楽器である。彼は1969年に購入した自分の ES-335 を、Crusaders 時代からずっと使い続け、本作でもメインのギターとして使用した。彼のトーンは、ピックアップの設定(Bridge ピックアップでハム・キャンセル、ややハイ・ミッドが立つ設定)と、サスティン重視の Mesa Boogie Mark IIB アンプの組み合わせで形成された。

この “Carltonトーン” は、80年代以降のすべての AOR ギタリスト(Steve Lukather, Robben Ford, Mike Landau など)に影響を与えた。AOR ギターの “歌うトーン” を確立した功績は、Larry Carlton 一人のものと言ってよい。

このアルバムの位置付け

  • 1976: Crusaders『Those Southern Knights』(Carlton 在籍最終作)
  • 1977: Steely Dan『Aja』(”Peg” のソロ候補)
  • 1978: Larry Carlton『Larry Carlton』(本作、ソロ・デビュー)
  • 1980: Larry Carlton『Strikes Twice』
  • 1981: Steely Dan『Gaucho』(”Third World Man” のソロ)

私的な感想——”Room 335″ の永久

“Room 335” を最初に聴いたのは大学のジャズ研の先輩の部屋だった。先輩は何度もこの曲をかけながら、Carlton のソロを採譜していた。AOR を AOR たらしめている要素のひとつが “ギターのメロディ” であることを、僕はこの曲で初めて意識した。

歌のないインストゥルメンタル・ナンバーが、これほど “歌う” ように聴こえる演奏は他に類例がない。Carlton は楽器でメロディを書く天才であり、その語彙のすべてが本作の8曲に詰まっている。AOR ギターを語るうえで、本作はもっとも重要な教科書である。

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