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The Long Run – Eagles 完全レビュー|Hotel California の重圧を背負った最終正規作(1979)

The Long Run - Eagles レビュー
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1979年9月、Eagles は通算6枚目にして最終正規作となる『The Long Run』をリリースした。Hotel California(1976)でロック史を変えた彼らが、3年の制作期間と対立を経て世に問うた本作は、Billboard 200 で1位を9週連続、ダブル・プラチナを獲得、グラミー賞 Best Rock Performance も受賞した商業的・批評的な大成功作だった。にもかかわらず、本作の制作中の精神的な疲弊から、彼らは1980年に事実上の解散へと向かう。”Heartache Tonight” “The Long Run” “I Cant Tell You Why” 3つのトップ10シングルを輩出した、Eagles の最終形態を捉えた歴史的1枚である。

Eagles - Heartache Tonight (Official Audio)
目次

このアルバムを聴くべき3つの理由

  • Hotel California の後、Eagles がどう “AOR バンド” として完成したかを最も鮮明に示す1枚
  • Timothy B. Schmit 加入後の初フル・アルバム。”I Cant Tell You Why” の彼のヴォーカルは、Eagles の音楽性に新しい色彩を加えた
  • “Heartache Tonight” — Glenn Frey、Bob Seger、JD Souther の共作。Eagles のシングル・ヒットとして最後の輝き

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背景:Hotel California の “あと”

1976年12月、Eagles は Hotel California で頂点に達した。全世界で2,000万枚以上を売り上げ、グラミー賞 Record of the Year・Best Pop Vocal Performance by a Duo or Group を獲得。ロック史を変えた怪物アルバムの後で、彼らが次に何を作るのか——この問いがバンドに重くのしかかった。

1977年〜1979年の3年間、ロサンゼルスのスタジオで彼らは前作を超える作品を目指して苦闘した。当初は2枚組アルバムを構想していたが、Don Henley と Glenn Frey の創作的な対立、Don Felder の方向性の違い、そして Randy Meisner の脱退(1977年)など、対立が頻発。Meisner の後任として Poco の Timothy B. Schmit が加入したのが1977年12月。最終的に、構想していた2枚組から1枚組へと縮小し、1979年秋にようやくリリースに漕ぎ着けた。

プロデュースは Bill Szymczyk(前作 Hotel California から続投)。録音は Bayshore Recording Studios(マイアミ)と One Step Up(ロサンゼルス)など複数のスタジオで進められた。

全曲レビュー(Side A → Side B)

Side A

1. The Long Run(3:42)★

タイトル曲。Billboard Hot 100 で8位の中堅ヒット。Glenn Frey と Don Henley の共作で、両者のヴォーカルがフロントを共有する Eagles 黄金のフォーマット。”We can handle some resistance / If our love is a strong one” のフレージングには、対立のなかでも音楽でだけは結束していたバンドの “矜持” が垣間見える。

2. I Cant Tell You Why(4:55)★ ティアA

本作の——そして AOR 全体の——重要なバラードのひとつ。新加入の Timothy B. Schmit がリード・ヴォーカルを担い、Don Felder の珠玉のギター・ソロが彩る。Billboard 8位。Schmit のソフトなテノールは、Henley/Frey のラフな声質とは全く異なる “白いソウル” の色彩を Eagles にもたらした。AOR とソウル・バラードの境界線を最も自然に超えた瞬間。

3. In the City(3:46)

Joe Walsh が主唱する、彼の前作(James Gang 時代の “Walk Away” 系)を彷彿させるロック・ナンバー。映画『The Warriors』(1979)のサウンドトラックにも使用された。

4. The Disco Strangler(2:46)

本作のなかで最もアウトサイダー的な曲。Henley/Frey が当時のディスコ・ブームを皮肉ったブラック・ユーモア溢れる短編。

5. King of Hollywood(6:28)

6分超の長尺曲。ハリウッドの欲望と腐敗を題材にした Henley らしい辛辣な歌詞と、Don Felder の長いギター・ソロ。Hotel California のダーク・サイドの延長線上にある重い1曲。

Side B

6. Heartache Tonight(4:25)★ ティアA

Eagles 最後の Billboard Hot 100 第1位獲得シングル。Glenn Frey、Don Henley、Bob Seger、JD Souther の4人による共作。マイアミでの録音で、Seger 自身もコーラスで参加している。グラミー賞 Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal を受賞。Eagles がいかにロック・バンドとしての矜持を保っていたかを示す象徴的な1曲。

7. Those Shoes(4:55)

Don Henley 主唱の、女性の社会進出を皮肉った歌詞。Joe Walsh と Don Felder のツイン・ギターのトーキング・モジュレーター(talk box)のソロが印象的。

8. Teenage Jail(3:43)

Joe Walsh のロック寄りの楽曲。本作中もっとも疾走感のあるトラック。

9. The Greeks Don’t Want No Freaks(2:20)

大学のフラタニティを揶揄したコミカルな短編。Eagles が遊び心を捨てていないことを示す軽妙な1曲。

10. The Sad Cafe(5:35)

クロージング。David Sanborn のアルト・サックス・ソロが本作中もっとも印象的な彩りを加える。ロサンゼルスの伝説的なクラブ Troubadour で過ごした70年代を懐かしむ歌詞は、Eagles 自身の “終わりの予感” を漂わせる。”There comes a time / We dont stay long” のフレージングは、Hotel California の終曲 “The Last Resort” と並ぶ Henley の代表作。

参加メンバー(5人組の最終形態)

  • Vocals/Drums: Don Henley
  • Vocals/Guitar/Piano: Glenn Frey
  • Guitar: Don Felder
  • Guitar/Vocals: Joe Walsh
  • Bass/Vocals: Timothy B. Schmit(新加入)
  • Producer: Bill Szymczyk
  • Special Guests: Bob Seger(”Heartache Tonight” コーラス), David Sanborn(”The Sad Cafe” サックス), JD Souther

Timothy B. Schmit の加入により、Eagles のヴォーカル・ハーモニーは新たな色彩を獲得。彼の柔らかいテノールは、Don Henley のラフな声質、Glenn Frey の中音域、Joe Walsh のしゃがれ声と組み合わさったとき、独特の “厚み” を生む。Eagles のサウンドが Hotel California から本作にかけてどう変化したかは、この声の配合の違いに集約される。

商業的成功と “解散の予感”

本作はリリース直後から Billboard 200 で1位を9週連続キープ、最終的にダブル・プラチナ(200万枚)を達成。1979年〜1980年のワールド・ツアーも大成功を収めたが、ツアー終盤の1980年7月、Glenn Frey と Don Felder がステージ上で衝突するという事件が発生。これを最後に Eagles は事実上の活動停止に入る。

Don Henley と Glenn Frey はそれぞれソロ活動へ。1994年の Hell Freezes Over まで14年間の沈黙となる。本作は、Eagles 黄金期の最後の輝きを捉えた “ピリオド” のような作品である。

このアルバムの位置付け

  • 1976: Hotel California(前作。ロック史を変えた怪物作)
  • 1977: Randy Meisner 脱退、Timothy B. Schmit 加入
  • 1979: The Long Run(本作、最終正規作)
  • 1980: 事実上の解散
  • 1994: Hell Freezes Over(14年ぶりの再結成作)

私的な感想——”I Cant Tell You Why” の柔らかさ

Eagles のなかで最も “AOR” な1枚は、僕にとって本作である。Hotel California はあまりにもロック史的に重い “事件” だが、The Long Run は対立と疲労のなかで、それでもメロディの強度だけは保ち続けた “成熟” の音である。”I Cant Tell You Why” の Timothy B. Schmit のヴォーカルを聴くたびに、Eagles というバンドがいかに繊細なハーモニーで成り立っていたかを再確認する。

1980年代のラジオで “Heartache Tonight” が流れるたびに、僕は彼らがすでに解散していたことを忘れていた。それくらいこのアルバムの楽曲群は、解散後も “生きた音” として聴き続けられている。

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