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【シティポップ名盤】松原みき『POCKET PARK』を聴く|「真夜中のドア〜Stay With Me」が世界を一周した理由

夜の都市の灯り シティポップのイメージ
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2020年12月、Spotifyのグローバル・バイラルチャートで18日連続1位を記録した曲がある。しかもそれは、リリースから41年が経った日本の楽曲だった——松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」。この一曲を擁するデビュー作『POCKET PARK』は、シティポップ世界的再評価の象徴として、いま改めて聴かれるべきアルバムだ。

松原みき - 真夜中のドア〜stay with me (Official Lyric Video)

本サイトはアメリカのAOR名盤を軸に紹介してきたが、『POCKET PARK』はその洗練が日本でどう結実したかを示す好例だ。シティポップの源流としてのAORの視点から読み解いていく。

目次

どんなアルバムか

『POCKET PARK』は松原みきの1stオリジナル・アルバムで、1980年1月21日にキャニオン・レコードからリリースされた。先行するデビュー・シングル「真夜中のドア〜Stay With Me」は1979年11月5日の発売で、各種新人賞を受賞している。なお、アルバム収録版はシングルとは異なり、イントロがコーラスのみで静かに始まるバージョンになっている——この違いに気づくと聴き比べが楽しい。

AORとのつながり──林哲司のアレンジに流れるアメリカ

「真夜中のドア」の作曲・編曲を手がけたのは林哲司。作詞は三浦徳子だ。この曲を一度でも聴けば、跳ねるクラヴィネット、タイトなドラム、洒脱なコード進行に、アメリカのAORとソウルの血が濃く流れていることが分かる。

具体的には、ジョージ・ベンソン『Breezin’』が確立したスムースな質感や、パトリス・ラッシェン『Pizzazz』の弾むファンク・グルーヴと、同じ系譜に連なる音だ。さらにネッド・ドヒニー『Hard Candy』のような「白いソウルのメロウネス」も、松原の歌の背後に確かに息づいている。アメリカ西海岸の洗練を、日本語の歌謡曲メロディに違和感なく接続した——それが林哲司の仕事だった。

「真夜中のドア」が世界を一周した理由

2020年、この曲はインドネシアの歌手レイニッチがYouTubeに上げたカバーをきっかけに、東南アジアから世界へと一気に広がった。前述のとおりSpotifyグローバル・バイラルで18日連続1位、2021年3月31日にはアルバム『POCKET PARK』が重量盤LPで再発されている。

なぜ40年後の海外リスナーに刺さったのか。私見では、生演奏の温度と、洗練されているのにどこか切ない情緒が、打ち込み中心の現代ポップに慣れた耳に新鮮だったからだ。AORという「源流」がもつ普遍的な気持ちよさが、国境と世代を越えて再発見された——その象徴がこの一曲なのだ。

松原みきという歌手

忘れてはならないのは、松原みきがジャズを素地にもつ実力派ヴォーカリストだったことだ。「真夜中のドア」のあの伸びやかで芯のある歌声は、単なるアイドル的な可憐さではなく、確かな歌唱技術に支えられている。アルバムを通して聴くと、彼女の表現力の幅がよく分かり、一曲だけのバイラル・ヒットでは語りきれない奥行きが見えてくる。

私的な視点

「真夜中のドア」だけを聴いて満足するのはもったいない。アルバム単位で聴くと、林哲司のアレンジがどれほどAOR/ソウルを血肉化していたか、そして松原みきがどれほど力のある歌手だったかが立ち上がってくる。AOR好きなら、ニヤリとする瞬間がきっと何度もあるはずだ。

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