「Plastic Love」が世界的に再発見されたとき、その源泉となったアルバムが竹内まりや『VARIETY』(1984年)だった。結婚と出産を経て約3年の休養から復帰した竹内まりやが、シンガーソングライターとして完全に覚醒した一枚であり、夫・山下達郎が全面プロデュースを手がけた、夫婦の共作とも言える名盤だ。
本サイトはアメリカのAOR名盤を軸に紹介してきたが、『VARIETY』はその洗練が日本の歌に結実した到達点のひとつだ。シティポップの源流としてのAORという視点から読み解いていく。
どんなアルバムか
『VARIETY』は竹内まりやの6枚目のオリジナル・アルバムで、1984年に発表された。全曲を竹内まりや自身が作詞・作曲し、編曲・プロデュースを山下達郎が担当。彼女にとって初のオリコン週間1位を獲得し、ソングライターとしての地位を決定づけた。「もう一度」「本気でオンリーユー」「マージービートで唄わせて」、そして「Plastic Love」を収めた、捨て曲のない一枚だ。
AORとのつながり──達郎の「アメリカ仕込みの精度」
このアルバムの音を決定づけているのは、山下達郎のプロデュースだ。彼が西海岸AORやアメリカン・ポップから吸収した「スタジオで一音ずつ磨き上げる精度」が、竹内まりやの伸びやかなメロディと歌謡曲的な親しみやすさに乗っている。
とりわけ「Plastic Love」のグルーヴは、ボズ・スキャッグス『Silk Degrees』が確立した「抑制の効いたファンキーなAOR」の系譜に明確に連なっている。アメリカの設計図を、日本語の都会的な物語へと翻訳する——その作業を、達郎とまりやは夫婦というユニットでやってのけた。源流のAORを知っていると、この一枚の解像度が一段上がる。
「Plastic Love」が世界を変えた
本作収録の「Plastic Love」は、2010年代後半にYouTubeのレコメンドを通じて世界的にバイラル化し、シティポップ再評価の最大の起爆剤となった。明るくダンサブルなアレンジと、恋に傷ついた女性の空虚を歌う歌詞——その多幸感と寂しさの同居こそが、国境を越えて刺さった理由だろう。アメリカのAORが持っていた「大人の哀感」が、日本語で結晶した瞬間だった。
私的な視点
『VARIETY』は「Plastic Love」だけのアルバムではない。全編を通して聴くと、達郎の完璧主義とまりやのソングライティングが噛み合った瞬間の幸福が伝わってくる。AORリスナーなら、随所に潜むアメリカ仕込みのアレンジに何度もニヤリとするはずだ。シティポップ入門としても、AORからの橋渡しとしても、最初に手に取るべき一枚だと思う。
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『VARIETY』は2021年にサブスク解禁済み。Spotify / Apple Music / Amazon Music などで配信中。※本記事には一部アフィリエイトリンクを含みます。歌詞・ジャケット画像は権利保護のため掲載していません。
